世界の車窓から

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スペイン・ポルトガル 〜初夏のイベリア半島横断の旅〜 撮影日記

カタルーニャ鉄道博物館
バルセロナの近郊列車沿線のみどころ
バルセロナの中心部から、近郊列車に乗って少し足を延ばすと、小さな町には興味深いスポットがいくつもある。訪ねたのは、スペイン国鉄の車両基地が置かれていたビラノバ・イ・ラ・ジャルトル駅。その隣にある「カタルーニャ鉄道博物館」で、1900年代初めに作られた木製車両を熱心に見ていたおじいさんに出会った。「小さい頃、こんな車両に乗って旅をしたよ。昔はバルセロナからマドリードまで9時間もかかったんだ。」と教えてくれた。現在は高速列車AVEに乗ると、わずか3時間の道のりだ。現地の人の生の声を聴き、175周年を迎えるスペインの鉄道の歴史を実感することができた。そんな偶然の出会いから、取材の内容が深まっていくのが「世界の車窓から」の醍醐味でもある。
近郊線の終点、サン・ビセンス・デ・カルデールス駅で「パウ・カザルス博物館」の取材をした時のこと。“チェロの神様”と言われる伝説的音楽家、カザルス。撮影は博物館の展示のみの予定だったが、やはり、チェロの演奏を撮りたいね、ということでカメラマンと意見が一致。急遽、現地でリサーチを開始した。地元の人によると、街にカザルスの名がついた音楽学校があるという。学校に取材のお願いをすると快くOKしてくれたのだが、その日は授業がないのでチェロを弾ける人はいないとのこと。どうにも諦めきれない私たちは、それならば、と楽器庫を見せてもらうことにした。そして、部屋の扉を開けるとそこにはなぜか、チェリストの女の子が。この偶然には、案内をしてくれた先生もびっくり。自主練習に来ていたという彼女にお願いし、素晴らしいチェロの演奏を聞かせてもらうことができた。
取材を通じて出会うスペインの人たちは、皆おおらかで、自分たちの土地の文化や魅力を知って欲しいという気持ちがビリビリ伝わってくる。この国に来られたことに感謝しつつ、良い番組にしなくては、と身が引き締まった日だった。
ディレクター 中村有里沙
鉄道好きのおじいさんと孫
カザルス音楽学校のチェリスト