スペイン・ポルトガル 〜初夏のイベリア半島横断の旅〜 撮影日記

- モンレアル・デ・アリサの村
- 人口190人の小さな村“モンレアル・デ・アリサ”
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マドリードを目指して車で移動中、面白そうな場所はないかと地図を見ていたときのこと。“モンレアル・デ・アリサ”という駅名を見つけた平林カメラマンが「ここに行こう!」と言う。なぜその駅に目を付けたかというと、私、ディレクター中村の名前が“ありさ”だからである。駅名は「聖なる山アリサ」という意味だそうで、なんだかありがたい名前がとても気になる。しかし、アラゴン州の大平原の、いうなればド田舎のエリアだ。コーディネーターNさんも、何があるかは行ってみないとわからないという。もっと情報がある大きな街を確実に取材するか、イチかバチかモンレアル・デ・アリサに賭けるか、非常に迷ったが、「面白そうな気がする!」と皆の直感が一致したため、行くことにした。
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モンレアル・デ・アリサ駅は、畑の真ん中にぽつんとたたずむ無人駅だった。列車は一日2本だけ。予想を超えた超・ローカルな駅に、撮影隊は大興奮。一直線に伸びる線路に雲の影が映る...時が止まったような美しい光景を夢中で撮影した。すると突然、列車の音が。慌ててカメラを構えると⻑い貨物列車が通り過ぎて行った。鉄道には旅客だけでなく、荷物の輸送という大事な役割もあったことを思い出す。
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集落がある丘には中世のアラゴン王国時代の城があり、国境の街として栄えていたそうだが、現在の人口はわずか190。村に一軒あるパブで出会った男性が「畑以外何もないけど、のどかでいい村だよ」と言う。昼間から酒とおしゃべりを楽しむ彼らの様子を見ているとわかる気がした。
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この路線はバルセロナとマドリードを結ぶ主要な鉄道ルートだったが、2008年に高速列車AVEが開通し、列車の本数は減少。移動は便利で速くなった一方、旅行者が通り過ぎてしまう場所でもある。そんな村に立ち寄り、決して有名ではないが心に残る風景に出会うことができた。時には最短ルートを外れて寄り道してみる、旅の醍醐味を改めて実感した日だった。
- ディレクター 中村有里沙

- モンレアル・デ・アリサ駅のホーム

- パブで出会った男性たち