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スペイン・ポルトガル 〜初夏のイベリア半島横断の旅〜 撮影日記

バルの生ハムとチーズ
“美食の国” スペイン
ロケの中で、撮影以外の大事なことと言えば食事だ。日々、大量の機材を担ぎ、列車の時刻に追われて走る…とかなりの肉体労働をこなしているため、スタッフにとって食事は大きな楽しみなのだ。幸いスペインに来てからというもの、定番の生ハムやじゃがいも入りのオムレツ、さくらんぼをはじめとする旬のフルーツなど、何を食べても美味しいので「人生で一番美味い」を連発し、みんなに笑われている。
中でも毎日のように食べているのが、スペインのサンドウィッチ“ボカディージョ”だ。バゲットに肉や野菜、チーズなど様々な具をはさみ、オリーブオイルをかける定番のメニューで、どこのカフェやバルにもある。撮影の合間に手軽に食べられて助かるのだが、少し困るのがあまりに巨大なこと。特に地元の人向けの食堂では、長さ30センチはあろうかというパンに、具がぎっしりはさまれ、軽く二食分はありそうだ。初めは驚いていたのだが、次第に慣れて食べきれるようになってしまった。列車では、家からパンと数種類の具を持参し、その場で作って食べ始める人もいた。携帯ボトルに入れたオリーブオイルをかけて、作り立てのボカディージョを美味しそうに食べる姿に、並々ならぬ食へのこだわりを感じた。
もうひとつ、スペインらしいのは、食事時間が遅いことだ。昼食は午後2時、夕食は9時からが普通で、レストランもこの時間に合わせて営業する。日本時間の腹時計を持つ撮影隊は、夜7時にはお腹が空いてしまい、必死で開いている店を探すのが恒例となっている。スペイン人の夏の夜の過ごし方といえば、日が暮れる夜9時頃からおしゃべりと食事を2~3時間楽しむことなんだそう。ちなみに、朝の活動の始まり時間は遅くならない代わりに、長めの昼休み“シエスタ”があるらしい。丁寧に食事に時間をかけ、人とのコミュニケーションを楽しむスペインの人たちの生活には憧れるばかりである。
ディレクター 中村有里沙
オロペサのホテルの料理
ボカディージョを作る乗客