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スペイン・ポルトガル 〜初夏のイベリア半島横断の旅〜 撮影日記

トレン・ダルス・リャクス
湖を巡る観光列車“トレン・ダルス・リャクス”
今回の旅では、高速列車から各駅停車まで、様々な列車に乗ることができた。中でも“トレン・ダルス・リャクス”、カタルーニャ語で「湖の列車」という観光列車は、番組で取り上げるのは初めて。ガイドブックにもほとんど載らない、ちょっとマイナーな列車だ。リェイダ駅から、北部の山間を走る90キロの路線で、運行は週末に一往復だけ。今回のロケ日程では撮影チャンスは一度しかない。そのため、現地スタッフにドローンカメラで列車の走行シーンの撮影をお願いした。事前に映像や資料を送って番組のイメージを伝え、カメラテストも行い万全の体制で臨むこととなった。
当日は天気も良く、絶好のコンディション。列車は、のどかな田園地帯から一気に山間へ突入した。「湖の列車」という名前から、美しい風景の中を優雅に走る列車を想像していたのだが、実際は、岩山のトンネルに猛スピードで突っ込んでいく、スリル満点の列車だった。40ものトンネルを抜ける間に、次々と川や湖が現れる。車窓から風景を撮影するカメラアシスタントの⻘木君は、一瞬も気が抜けず窓に張り付いている。後で撮った映像をチェックすると、「すごい・・・マジすごい!」という⻘木君のつぶやきも収録されていた。普通、カメラマンは映像に自分の声が入らないように撮影中は喋らないのだが、あまりの絶景に心の声が漏れてしまったらしい。
ドローン撮影はというと、列車が撮影ポイントに近づいたところで、車内の私から携帯電話で連絡して合図を出す計画だったのだが、いよいよポイント、という肝心なところで圏外に。音信不通となっておろおろしている間に、そこは有能なカメラマンが自己判断で撮影スタート。巨大な岩山の間を縫うように列車が走る、迫力ある映像をしっかりと撮影してくれた。スペインといえば、乾いた平原のイメージが強かったのだが、険しい岩山と水が織り成す風景に魅了され、スタッフ一同大満足の一日となった。
ディレクター 中村有里沙
そびえる岩山
風景を眺める乗客たち