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スペイン編 撮影日記

グエル公園からバルセロナの街を眺める
スペインの春
“情熱の国”というキャッチフレーズのせいか、ヨーロッパの南の方という印象が強かったせいか、スペインの春は暖かいと思い込んでいた。天気予報によれば、バルセロナと東京の4月の最高気温は同じくらい、南に行けば30℃近い日もあるようだ。ただ、バルセロナ近郊の山モンセラットにも行くので、念のため厚手の上着も用意して出発した。
撮影初日の朝、バルセロナの空気は思っていたよりも冷たかった。あとで調べて分かったが、バルセロナの緯度は青森県とほぼ同じで、地中海性気候で夏は暑くなるが、季節の変わり目は昼夜の気温差が大きく、天候次第で、日中もぐっと寒くなることもあるらしい。
寒い寒いと言っていると、コーディネーターの難波さんが、スペインには
Hasta el 40 de mayo, no te quites el sayo(5月40日までは、上着を脱げない)
という諺があると教えてくれた。
つまり、6月初旬までは天候が不安定になることもあるので、上着をしまうのはまだ早いよ!ということらしい。私たちが滞在するのはまさにこの時期。持っていった上着がこれから毎日大活躍するとは、この時点では想像もしていなかった。
初日の午前中、バルセロナの街の撮影に向かった。スペインで最も多くの観光客が訪れる街とあって、朝8時過ぎに到着したグエル公園には、早くも人が集まってきている。その後、建築家ガウディが手がけた建物をいくつか回ったが、どこも人がいっぱい。サグラダ・ファミリアの入り口はテーマパークのエントランスかと思うくらいごった返している。
道路をひとつ挟んだ公園から、サグラダ・ファミリアのファサードを撮影していると、地元の方々が楽しそうに何かしている。聞いてみると、週2回、この公園でペタンクというスポーツの試合をしているらしい。金属球を投げて、目標の球に近づけるペタンクは、あまり体力を必要としないので、健康管理のためスペインのシニア層に人気なんだそう。世界中から観光客が押し寄せる世界遺産を横目に、試合に夢中になる総勢50名ほどの地元の人たち。それまで観光客と一緒に不思議な建物をさまよってきた私にとって、やっとバルセロナの日常に遭遇した瞬間だった。
ディレクター 渡部博美
シニア世代にも人気のペタンク
建設が続くサグラダ・ファミリア