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ニュージーランド南島 大自然と動物に出会う旅編 撮影日記

トランツ・アルパイン号と羊
羊の国・ニュージーランド
ニュージーランドは人より羊の数が多い、羊の国。
だから「羊と列車」は必ず撮りたいカットだった。青々とした牧草地の中で草を食み、のんびり日向ぼっこをしている羊たち。その後ろを列車が走る。そんな理想的なカットの撮影に、私たちは本当に苦労した。
車での移動中、いたるところで羊を見かけた。時には車を停めて、美しいニュージーランドの風景をバックに、かわいい羊たちの様子も撮影した。しかし、そこにはいつもあって欲しい線路は近くに無かった。列車に乗っている時、車窓から羊がいるかどうかも必ずチェックしていた。しかし、目に飛び込んでくるのは牛が多かった。ニュージーランドは近年、羊に追いつくような勢いで、牛の飼育が盛んになっているのだとか。第一、列車の中から羊を見つけても、後日そのポイントに向かって羊がいる確証もない。
そして、ようやくチャンスが到来した。線路脇に羊の群れを見つけたのだ。そのポイントの列車通過予定時刻まであと30分。嫌な予感は的中した。カメラから羊がどんどん遠ざかり見えなくなってしまった。しかし、新たに「羊と列車」のポイントを探すのは危険過ぎた。なぜなら、列車が1日に1本しか走らないからだ。羊を追い求め過ぎて、列車の撮影を逃すわけにはいかない。待つこと1時間、予定より30分程遅れて、羊がいない中、列車はやってきて走り去った。
残念でならなかったが、とても思い出深いエピソードがある。実は、羊がいなくなってしまったポイントのすぐ先には民家があった。30分以上も、大きなカメラを構え動かないなんて、知らない人から見たら不審人物だろう。とうとう痺れを切らしたのか、家の中からおじいさんが出てきた。何か文句でも言われるのかと思ったら、ポストの新聞を取りに来ただけで、私たちに笑顔で挨拶してくれた。かわいい愛犬も一緒で、本当に癒された。ニュージーランド人らしい人柄に触れられた瞬間でもあった。
結論を言うと、「羊と列車」はロケの最後の最後に1カットだけ撮ることが出来た。力を貸してくれたスタッフに、本当に感謝している。
ディレクター 福良 美佳
羊はいたるところにいたのだが…
撮影で出会った近隣のおじいさん