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フランス パリ発・聖夜のアルザスと冬のアルプスの旅 撮影日記

シャモニーからアルプスを登る モンタンヴェール鉄道
アルプスの核心部
リヨンを過ぎて撮影も大詰め、いよいよアルプスが迫って来た。ここに来て一番気がかりなのは天気である。冬のアルプスは一旦荒れると悪天候が長く続く。しかも今回は、スケジュール的に予備日が充分とは言えず、一発勝負に近い。アルプスの高峰が、冬のさなかそうやすやすと顔を見せてくれるだろうか。
山がちになると霧が立ち込める日が多くなってきた。幻想的で美しいが、しつこい霧でなかなか消えない。そういえば、今回のロケで風を感じる絵がほとんど無いことに気がついた。海に囲まれた日本列島は、数日おきにやって来る低気圧に風が吹き込み、天気が変わっていく。海から遠いフランス内陸部は、同じような天候が続くいわゆる大陸性の気候ではないだろうか。実は、私は趣味の範囲だが、山屋である。山では度々霧に包まれるが、その上は晴れていることがある。鉄道が走る盆地の谷底は無風で霧に覆われているが、実は晴天なのかもしれない。
標高が上ると霧がとれてきた。案の定、上は快晴である。標高3000mほどのスキー場からはアルプスが一望の元、モンブランもあっけらかんと全貌をさらけ出す。ここまで丸見えだと、この先最後まで天気が続くか不安になって来た。日本の冬のアルプスなら晴天は10日に1日あるかどうか。ヨーロッパアルプスなら、しばらくは持つのかもしれない。  
一旦下に降りて、モンブラン急行でシャモニー・モンブラン駅をめざす。標高が低いからか車窓は霧でどんより。ところが、アーチが美しい高架橋に差し掛かると急に太陽の光が差し込み、ベールがとれた。アルプスの精鋭たちが勢ぞろい。エギーユ・デュ・ミディの鋭い針峰群。その隣には標高4807mの最高峰モンブラン。まさに大パノラマだ。その下には氷河も見える。カメラマンも興奮を隠せない。息遣いで絵が心地よく揺れている。藍色のスカイラインが美しい。空気が薄くなると一段と青みを増して来る、いわゆるヒマラヤンブルーである。最後に待っていたのは、まさに地球の色だった。山の神に感謝! 
ディレクター 浦野 俊実
モンブラン・エクスプレス
シャモニー・モンブラン駅