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タイ~常夏の楽園と古都をめぐる旅~ 撮影日記

バンコクの高架鉄道BTS
リモートで伝わるタイの熱気
気軽に海外へ渡航できなくなってから2年。以前まで海外ロケを担っていたディレクターは、新しい番組作りの方法を模索してきました。私自身も、ネットで外国人のインタビューを行ったり、外国で出回っている映像を使ったりして、最新の海外の情報を届けることに力を注いできました。しかし、完全にリモートだけで番組をゼロから作るのは、今回が初めての試みです。
まずは、タイ居住のコーディネーターとカメラマンとのリモートでの顔合わせからスタートしました。両者とも日本人なので心配していた言葉の壁はなく、スムーズにコミュニケーションが進みました。私がネットや観光ブックで下調べをした情報をもとに、綿密なロケスケジュールを立て、撮影項目を一つ一つ確認していきます。でも、ただ想定通りに撮影していくだけでは、番組は決して面白くなりません。特にこの番組では、“その土地での偶然の出会い”が重要です。どのような出会いにどれくらい撮影時間を費やすか、そういった判断は日本にいる私には困難なため、現場に任せるしかありません。期待と不安が入り交じりながら、リモートロケが始まりました。
時差はわずか2時間なので、リアルタイムでメールをやり取りしながら、撮影を進めていきます。1日のロケが終わると夜、撮影された映像がネットで送られてくるので、ドキドキしながら再生・・・。映像を観て、私はようやく“今現在”のタイを目の当たりにしました。どこか頭の中で勝手に時間を止めてしまっていたのですが、絶えず変化を求め今日を生きる人々の姿が映像に盛り込まれていたのです。
仏像に祈りを捧げる人、笑顔でカメラに手を振ってくる子供たち、毎朝改札で働く駅員さんなど、現地スタッフが出会ったタイは、まさに力強い熱気に満ち溢れていました。
ロケが進むにつれて、毎日山のように送られてくる現場の写真や、メールと電話での情報交換を続けるうちに、少しずつリモートロケの不安が解消されていきました。もちろん、現地に行きたいという気持ちは募るばかりですが、頭の中で膨らんでいった数々の物語を編集にうまく取り入れていきたいです。まだまだ簡単には訪れることができない海外ですが、海の向こうで命を燃やしている人たちの熱い空気を少しでもお届けできればと思います。
ディレクター 岩田 有正
ピサヌローク駅で列車を待つ人々
ランパーンの市場