世界の車窓から

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フランス パリ発・聖夜のアルザスと冬のアルプスの旅 撮影日記

パレードを待つ人々(ナンシー スタニスラス広場)
リモートでつながるスタッフ
パリからはじまったリモートロケ。ストラスブール、リヨンを経て冬のアルプスをめざす。カメラマンやコーディネーターはフランス在住の日本人。ディレクターは東京在住。撮影時、日仏がLINEで繋がっての取材である。私ディレクターは、厚生労働省の規定に則れば前期高齢者に属する。車窓の経験はまあ豊富なほうだがLINEは今回がデビュー戦。うまく使いこなせるか不安だった。それよりも気がかりなのは、話したこともないカメラマンとの意思疎通である。
撮影した映像はその日のうちに送ってもらいカメラマンのクセをチェックする。脚付きの絵は安定していて、アングル、切り取り方も申し分ない。雨上がりのパリ、凱旋門前に出来た何の変哲もない水溜りをローアングルでおさめた絵に心を奪われた。この絵を観て、音楽はジェーン・バーキンの「ぬかるみ」に決める。人の撮り方も悪くない。ただ手持ちで撮る際、若干揺れ過ぎの感がある。(揺れには、息遣いがシンクロする気持ちがいいのとそうでないのとがある)
通常のロケでは、一緒に現場に立つカメラマンの性格や絵の質を熟知しているので、あまり注文は出さない。今回はリモートということで、多くを語り合った。一番理解して欲しかったのは、レンズの基準である。日本人にとって興味深いことが、フランスでは当たり前のこともある。それを撮り逃しはしないか。レンズの立ち位置はフランスではなく、あくまで日本だ。一般の日本人、ナレーションの石丸さんと言ってもいい。
実は、このことは車窓の根っこにあたることだと思う。何を、どう撮るか。これまでなら言わずもがなだった車窓の核心を、リモートだからこそあらためて話し合うことができた。そしてもうひとつ大切なことが、人々との出会い。レンズに、いい表情で返してくれることほど嬉しいことない。笑顔は世界共通の言語である。車窓はカメラが旅をして、様々な風物や人との出会いを重ねてゆく番組なのだ。
いよいよアルプスの核心部、果たしてモンブランは顔を見せてくれるのだろうか。
ディレクター 浦野 俊実
乗客に取材中
コルマール駅にて