世界の車窓から

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カナダ編 撮影日記

高台からペルセの街を見下ろす
旅の終わり
カナダの旅、最後はモントリオールからケベック州の東の果てにある小さな街ガスペまで、1047キロを結ぶ寝台列車に乗車した。夕方6時頃モントリオールの街を出発し、翌日の12時頃にガスペに着く予定だ。普段愛用している枕を持ち込んでいる乗客たち。夜7時半、車内は早めの消灯。翌朝、天気は快晴。車窓に広がるセントローレンス湾に朝日が昇り、海と列車の車体が赤く染まる。この車窓を楽しみに早起きした乗客たちは、この素晴らしい光景に、ただただ見入っていた。終点ガスペは深い霧に包み込まれ、通りを歩いている人影は、ほとんどなかった。先住民の言葉でガスペとは、「果ての地」を意味する。その名のとおり、どことなく寂しい感じが、私は好きだった。
到着した翌々日、列車の走りを撮影しようと、海沿いの小高い丘の上で、列車が来るのを待っていた。予定時刻を過ぎても来ない。この日は、10月上旬にも関わらず、気温は氷点下。雪が混じる冷たい雨が容赦無く降りつけ、服や靴下が明らかに濡れてきているのがわかった。鉄道会社に連絡をしても繋がらない… 1時間、2時間と時間は過ぎてゆく。予定時刻から、およそ3時間後、ようやく鉄道会社に電話が繋がった。我々が居る場所の二つ手前の駅で、車両トラブルにより列車は停まってしまったのだ。1か月近くカナダで撮影をしていて、列車が遅れることは度々あった、しかし、来なかったというのは初めて。地元の人に話を聞くと、度々こんなこともあるそうだ。
日本の27倍もの国土を持つ、広大なカナダの旅。西部と東部を合わせて、乗車した路線は7路線、総走行距離は4000キロにも及んだ。どの路線も、大自然が広がる車窓は素晴らしく、スケールの大きなカナダを旅するのに、列車はまさに最適だった。今回、我々が足を運んだ場所は、カナダのごく一部にしか過ぎない。また、いつかカナダの旅の続きをしたい。
ディレクター 木下洋輔
霧に包まれたガスペの街
寝台列車の車内