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カナダ編 撮影日記

紅葉の中センテールへ向かう列車
道路がない
モントリオールから北西700キロ程離れた場所に、「センテール」という小さな街がある。モントリオールと、このセンテールを11時間かけて結ぶVIA鉄道の列車に乗車をした。
乗車してみると、乗客が数組しかいない。彼らに話を聞くと、全員が沿線に住む人々だった。この列車は、いわゆる「ローカル列車」。メープル街道を走る列車のように、観光客の姿は無かった。元々は、金や毛皮を運ぶために敷設されたというが、今では沿線に住む人々の生活の足になっている。
モントリオールを出発して4時間半。深い森林地帯に入った。青空と雲を綺麗に反射させる湖が、無数に点在している。途中「ラ・チューク駅」に到着すると、多くの乗客たちが乗り込んできた。今日は、カナダでは「サンクス・ギビングデー」で、休日。そのため、通常よりも乗客たちが多いのだとか。実家へ帰省する若者や、娘と孫に会いに行った帰りの老夫婦など様々。中には、先住民の家族の姿もあった。親戚の家へ、バーベキューをしに行くのだそうだ。そのため、食材が大量に入ったクーラーボックスを列車に何個も積んでいた。
車窓や地図を眺めていると、あることに気付いた。沿線には、道路がない。目につくのは森と湖ばかり。この列車の貨物車に、大量の荷物を積み込む乗客たちの理由がわかった。この列車が、彼らにとっては大切な移動手段なのだ。
夜9時、予定よりも1時間半遅れてセンテール駅に到着した。列車の故障やトラブルがあったわけではない。遅れたからといって、気をとがめている乗客もいない。遅れた理由を鉄道のスタッフに聞くと、「乗る人が多かったから、荷物の積み下ろしに時間がかかったのさ」と、さらっと答えた。田舎を走るローカル列車らしい話である。
ディレクター 木下洋輔
川の上に敷かれた線路を渡る
生活の足として利用する人々