ベトナム南北縦断1800キロの旅 撮影日記

- 来遠橋
- ランタンきらめくホイアン
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ベトナム中部のホイアンは、かつて国際的な貿易港として栄えた港町。その古い街並みは世界遺産に登録されていて、夜になるとあちらこちらにランタンが灯ることで知られている。実を言うと、この街に関してはほとんど下調べをしていなかった。ガイドブック等で、情緒あふれる素敵な場所だということは分かっていたので、行けば何とでもなるだろうと高をくくっていたのだ。しかしいざ訪れると、予想外の光景が待っていた。ものすごい数の観光客でごった返していたのである。中でも一番の名所・来遠橋は人で埋め尽くされていて、「情緒よ、いずこに...?」と思ってしまうほどだった。
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人の多さにいささか当惑しながらも、次の場所へと移動する。向かったのは、眺めが良いと人気の古民家カフェ。3階にある屋上テラス席からは旧市街の瓦屋根を見渡すことができる。そこでは夕刻の空を背景に、多くの女性たちが楽しそうに写真を撮っていた。上からはチャンフー通りが見えるのだが、こちらは人通りも落ち着いている印象。沈みかけた日の光が良い感じに街全体を照らしていて、風情を感じられた。実景を撮り終えて外に出ると、店先にはちらほらとランタンが灯り始めていた。
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日が落ちてすぐのまだ薄明るい時間帯。旧市街の横を流れるトゥボン川に到着した。ここでは、ランタンを乗せたボートで川を遊覧するのが名物となっている。我々もボートに乗り込みカメラを構える。最初は「人多いな...」とネガティブな感情を抱いていた私だが、ここでその思いはオセロのようにひっくり返った。ランタンきらめく街が、感動的なまでに美しかったのだ。そしてこの景色には、人々の存在がひと役買っていることにも気がついた。遊覧客が多ければ多いほど、ボートに灯るランタンも増す。結果、何色もの光が川面に映り、幻想的になる。いわば観光客までも風景の一部にしてしまうその姿に、感服するほかなかった。
- ディレクター 寺村 南希

- 古民家カフェの屋上テラス席から

- ランタン灯るトゥボン川