世界の車窓から

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スイス編 撮影日記

サン・モリッツの街並
もっと、撮りたい。
ユングフラウ地方を離れるのに少々後ろ髪をひかれた。ラウターブルンネン・ミューレン山岳鉄道の走りが、いまいち撮れていなかったからだ。アイガーやユングフラウを絶好の位置から望め、トコトコと可愛く走る列車を、もう少しじっくり撮影したい…。スケジュールを組み直したりして二度挑戦したけれど、二度ともラウターブルンネンから先は雪崩注意報が出ていて、通行禁止。悔しい気持ちでインターラーケンを後にした。
サン・モリッツに来てからは晴天に恵まれたけれど、気温は日毎に下がっていった。朝、ベルニナ線の走りを撮っていると、架線が凍りついて、パンタグラフからバリバリと火花をあげるのが、いつもより激しい。ロケバスの温度計を見ると、なんと-17・5度だった。この日はこれから空撮。あわてて一度ホテルに戻り、防寒用の服をさらに重ね着した。ヘリコプターの空港へ行くと自家用ジェット機を乗り降りする、暖かそうな毛皮を着たセレブ風の人々を多く見かけた。さすが高級リゾート地。
ベルニナ線沿線は、世界遺産というだけあって本当に美しい。とりわけラーゴ・ビアンコは息を呑むほどの別世界だった。空撮も、車内からも、走りも晴天の中、十分に撮影できた。ところが、カメラマンの堀金さんは「もっと撮りたい。何とか撮らせてほしい。」とラーゴ・ビアンコに憑かれた様子。カメラマンの習性として、美しいものを目の前にすると「もっと、撮りたい」と欲してしまうのは当然だろうけれど、まだまだ撮影しなければならないものが待っている。説得して引き留めた。
ディレクター  宮崎祐治
ラーゴ・ビアンコ湖岸を走るベルニナ急行
大きくカーブを繰り返しながら進む列車