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カナダ東部 秋の紅葉とメープル街道の旅編 撮影日記

紅葉が車窓を通り過ぎていく
アガワ渓谷とグループ・オブ・セブン
トロントから飛行機でおよそ1時間半。スペリオル湖とヒューロン湖に挟まれた街スー・セント・マリーへやってきた。乗車するのは、街から北へと延びるアルゴマ・セントラル鉄道の、観光列車アガワ・キャニオン・ツアー・トレイン。目的地のアガワ渓谷は、道路のアクセスがなく、列車でしか訪れることが出来ない、知る人ぞ知る紅葉の名所。ちょうど紅葉真っ盛り、列車は連日満席だという。最高のタイミングで、その景色に期待が膨らんだ。
ところが、当日はあいにくの雨模様。それでも駅には200人を超える人々が集まっていた。出発から20分ほどで、列車はうっそうと茂る深い森や湖の間を縫うように走り出す。大きな窓には赤や黄色に染まった木々が次から次へと、スライドショーのように流れていく。時折、鏡のような湖面に景色が映し出される様はなんとも美しく、立ち込める霧と相まって幻想的な雰囲気を醸し出していた。更に奥地へ進むと見えてくるのがモントリオール鉄橋。地上40mの高さから見えるのは、どこまでも広がる紅葉の山々。思わず仕事を忘れて見入ってしまった。
この美しいアガワ渓谷一帯は、カナダでとても有名な7人の画家集団「グループ・オブ・セブン」のメンバーに愛されたことでも知られている。1920年代からこの名で呼ばれた画家たちは、当時、大自然の景観を求めて、冒険家のように交通の便の悪い奥地まで旅をしていた。特に、ここアガワ渓谷を気に入り、よくスケッチに出かけていたのだという。芸術家に多くのインスピレーションを与えた”絶景”を眺めながら、往復10時間の旅を満喫した。
トロントへ戻ってから、彼らの絵画を見ようと、郊外にある「マクマイケル・カナディアン・アート・コレクション」を訪れた。荒々しい風景を鮮やかな色彩で描き出した彼らの作品には、カナダの自然の素晴らしさ、豊かさ、そして奥深さまでもが表現されている。また、どのようにして大自然の中で描いたのか、展示作品を通して、その方法が明らかにされている。残念ながら、番組では紹介することが出来なかったが、トロントで時間があればぜひ訪れてみてほしい。きっと、カナダの自然の新たな魅力に出会えるはずだ。
ディレクター 深谷 純
モントリオール鉄橋を渡る
ローレン・ハリス「モントリオール・リバー」
Lawren S. Harris (1885–1970),Montreal River, c.1920,
Gift of the Founders, Robert and Signe McMichael,
McMichael Canadian Art Collection