カナダ東部 秋の紅葉とメープル街道の旅編 撮影日記

- 美しい景観が広がるプリンス・エドワード島
- 始まりの地、プリンス・エドワード島
-
今回の旅の舞台はカナダ東部。成田を出発しておよそ20時間、モントリオールを経由してようやくプリンス・エドワード島の空港に到着。午後11時をまわっていたので、そのままホテルへと直行した。時差ボケと初めての車窓ロケへの緊張で落ち着かない私に、ベテランカメラマンの築館さんが「自分なりの楽しみを見つけること」とアドバイスをくれた。この感覚を大切に、旅をしようと心に誓った。
-
翌日、「赤毛のアン」の舞台となった島の中心部から撮影はスタート。この島はなんといっても景観が素晴らしい。緑の牧草地と黄色く色づいた麦畑がパッチワーク模様を描き、鮮やかな原色の漁師小屋やレトロな灯台が、海辺を彩る。そんな美しい風景の中を車で走っていると、道路脇に真っ赤な実をつけたナナカマドをみつけ、懐かしさを感じた。昔、実家の庭にも植えてあったからだ。コーディネーター曰く、ナナカマドの実が多いほどその年の冬の寒さは厳しくなるのだとか。それを聞いて驚いた。祖母も同じことを言っていたのだ。日本から遠く離れたカナダの地で意外な共通点をみつけたことに一人テンションがあがった。そんな島の景色を撮影して回るのはとても心地よく、楽しいのだが、いまいち車窓のロケが始まっているという感じがしないのが気になっていた。
-
午後からは列車の走りを撮影するため、車で2時間半かけてカナダ本土のノバ・スコシア州へと向かった。事前に地図であたりをつけていたのは、湖をバックに木々の隙間を列車が通りぬける場所。しかし実際に行ってみたら、思いのほか樹木が茂っており列車が隠れてしまう。急きょ他の場所を探すことになる。線路沿いを車で30分ほど走りようやく見通しの良い草原を見つけたときには、すでに列車は遠くに迫っていた。車を飛び下り、カメラを構えると同時に、汽笛を鳴らしながら猛スピードで目の前を通りすぎていく。その姿を見た途端「世界の車窓から」のロケが始まったという実感が一気に湧き上がった。そして普段のロケではあまり感じることのない、こういうハラハラ感を楽しむことも車窓ロケの醍醐味なのかもしれないなと思った瞬間でもあった。
- ディレクター 深谷 純

- カナダ東部を走る長距離列車オーシャン号

- 赤毛のアンの家