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バングラデシュ編 撮影日記

100歳おばあさん
列車内マナーについて
シレットへ向かう各駅列車の車内で、愛らしいおばあさんを見つけた。特徴的な丸眼鏡をかけている。出会った瞬間、「この人に話しかけてみよう」と思った。いわゆるインタビューというやつである。インタビューをする人は、出会い頭の瞬間に判断する。おばあさんは、耳が遠いかもしれないから大声で話しかける。実は、見知らぬ人にインタビューする時は、こちらもかなり緊張している。どんな答えが返って来るか、どんな話し方をするのか、相手の出方を捉えて、どんな人か瞬時に判断しなければならない。人柄によって話し方も変えてゆく。
車窓の取材では、インタビューしないことも多い。今回は、敢えてインタビューをするつもりでいた。相手とのコミュニケーションが計れるし、言葉を交わすことで、その国が置かれている状況をおぼろげながら把握することができるからだ。
緊張の瞬間がやって来た。まずは、お決まりの質問からはじめる。「おばあさん、お歳は幾つ?」。ところがおばあさん、自分が何歳なのか分らない。ボケているわけではない。そう言えば、以前、バングラデシュで取材した時も同じようなシーンに遭遇した。比較的若い男性なのに自分の歳が分らない。相手の男性は、何でそんなこと訊くんだ、という感じだった。バングラデシュには、自分の歳が分らない人がかなりいる、ということを思い出した。
おばあさんの自己申告によると、100歳は越えてるという。あばあさんが列車を降りるとき、バングラデシュらしい光景に出会った。おばあさんの下車を、みんなが手を差し伸べて手伝っている。日本の大都市圏などの鉄道では、マナー啓発が盛んに行なわれているが、なかなかこのような光景には出会えない。手を差し伸べる、なんていうのは、本来マナー云々以前の行為なのだが。バングラデシュにはシルバーシートなんて無いが、マナーに関しては、日本よりちゃんとしているように思われた。
ディレクター 浦野俊実
各駅列車から見えるのどかな車窓
特等席の先頭車両