世界の車窓から

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バングラデシュ編 撮影日記

ローカル線を北に行く列車
バングラデシュでの当たり前
バングラデシュを鉄道で旅していると、日本では考えられないことに次々と出会う。まず、発車ベルが鳴らない。機関車の警笛が鳴るのみである、列車が動き出してからの飛び乗り。列車の窓にはガラスが無いことが多い。乗降口のドアも開いていることが多く、身を乗り出して風を受けている乗客も多い。駅に到着しても、ホームに降りずに、反対側に降りて線路を歩いてゆく。そもそも線路の上は、誰もが平気で歩いている。日本だったら当然×印だ。ところが、これらのことは、こと車窓の撮影にとっては全く好都合なのだ。ガラスの無い窓なんて風景を撮るにはもう最高!おそらく、日本ほど撮影しにくい列車は無いのではなかろうか。但し、発車ベル無しは要注意で、かつて、バングラデシュではないが、撮影中のカメラマンがホームに置き去りにされたことがあった。
バングラデシュ第二の都市、チッタゴン到着後は路線を変更。途中駅のアカウラまで戻り、各駅列車でバングラデシュの北東部、シレットをめざす。ちょうど中間地点に、スリモンゴルという紅茶の生産地がある。ダッカ、チッタゴンは大動脈で、日本の東海道本線にあたるが、こちらはローカル線。それでも活気が溢れている。
バングラデシュで撮影していると、良く話しかけられる。その時の質問がみな同じ。まず「国はどこ?」、次に「名前は?」、そして「何をしているの?」。決まってこの3つの問いが同じ順番で来る。しかも代わる代わる、次から次へと。余裕がある時はちゃんと応対するが、カメラが回ってテンパってる時にも平気で話しかけてくる。「何してるの?」と。見ればわかるだろ。ちょっと閉口。でも、悪い気はしない。日本ではこんなこと無いし。但し、近寄ってくるのはみな男で、女性はまず来ない。どうして、バングラデシュの男たちは、こんなに話しかけてくるのだろう?そんな思いを抱きながらシレットをめざすことになった。
ディレクター 浦野俊実
カメラを囲む人々
チッタゴンの夕日