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アルゼンチン ウルグアイ編 撮影日記

モンテビデオ近郊を走る
ウルグアイの近郊列車
アルゼンチンとブラジルに挟まれた小さな国、ウルグアイ。
かつては長距離を走る夜行列車もあったのだが、現在ウルグアイ国内を走っているのは、首都モンテビデオ近郊を走る63kmの路線と、観光用の不定期に走る蒸気機関車のみである。そこで私たちは近郊列車に平日と土曜日の2回乗車することにした。
平日の夕方、近郊列車の主な利用客は仕事帰りの人々だと聞いていた。私は仕事帰りの日本人サラリーマンの疲れた姿を思い浮かべ、車内の雰囲気は静かなものになるだろう、と予想していた。しかし、実際乗ってみると、そこにいたのは、トランプに興じる人々や、歌を歌う旅芸人たちなどで、とても賑やかな雰囲気だった。
トランプをしていたのは、年齢も職業もバラバラの男性達。彼らは仕事帰り、毎日同じ列車に乗り合わせるうちに仲良くなったそうで、トランプをして成績を競うのが日課とのことだった。
旅芸人のグループは歌を陽気に歌っているうちに、本来降りる駅を乗り過ごしてしまい、次の駅で降りることになってしまったのだが、「もしかしたら次の駅のほうが目的地まで近いかもしれないから大丈夫」と言って笑っていた。
一方、土曜日に乗車した日の翌週は、祝日が続く「観光週間」と呼ばれる一週間だった。そのため、キャンプに行く大家族がたくさん乗車していて、列車内は彼らの笑顔であふれていた。彼らは寝袋だけでなく、普段使っている毛布や枕などをそのまま持って行って使うようで、さながら引っ越しのような大荷物であった。
印象的だったのは、魚捕り網を大事そうに握りしめた男の子。彼は、撮影したその日が11歳の誕生日で、網は誕生日プレゼントにもらったものなのだという。これから家族と魚を捕りに行くのだと嬉しそうに教えてくれた。
「世界一貧しい大統領」として有名になったウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領は「富を求めるよりも人生には大切なものがある」と語ったそうだが、確かに、ウルグアイの人々は素朴ながらも「豊か」な生活を楽しんでいるように私には思えた。
ディレクター 永田奈津子
週末はレジャーの足として活躍
ファンが支えている蒸気機関車