Chart ⑧児童精神科医の仕事について パート②
コラム最終回となる今回は、前回に引き続き、児童精神科医の仕事についてご紹介します。
ポイント ④児童精神科医で大切なこと
心に生きづらさを抱えた子どもと向き合う上で大切なことは、とにかく子ども自身の味方になることです。
児童精神科では、訴えを持ってくるのが子ども本人ではなく保護者であることも多く、ともすると本人を置き去りにして話が進んでしまうことがあります。また、診療場面で扱う話題の多くが「あれができない」「こんなトラブルがあった」というネガティブなものになりがちで、そうすると子どもにとって安心・安全で応援されていると感じにくくなってしまいます。そのため、子ども自身を主役において「一緒に困りごとを解決していこう」という姿勢が大切です。
一方で、その子と一番長く付き合っているのも、その子のケアを主にするのも保護者ですので、彼らがどうやって子どもと上手くやっていくかを考えてアドバイスすることも必要です。またほとんどのケースで、子どもは保護者のことを信じているし近くにいたいと思っています。ですから、保護者がきちんと納得できるような説明や方針立てをすることも欠かせません。保護者をエンパワメントして子どもに良い関わりをしてもらうことが、子どもにとっても大切なことです。
そうはいっても、どうしても子どもと保護者の利害が対立する場面、保護者の関わりがあまりにも不適切な場面もないわけではありません。そういう時は最終的に何があろうと絶対に子どもの味方になる、という覚悟も必要です。
ポイント ⑤児童精神科医の魅力
児童精神科医の一番の面白さは、なんといっても「子どもの成長を見守ることができる」ということです。
児童精神科に相談が来る内容は、「集団で行動できない」「喧嘩をしてしまう」「学校に行けない」「ストレスが身体症状に出てしまう」等、大きく捉えるとどれも「子どもの人生のつまずき」です。そういったトラブルをなんとか乗り越えて、前向きに次のステップに進んでいってもらうこと。それを、時間をかけて見守れるのは、長い時間をかけて人生の問題を一緒に考えていく児童精神科ならではの醍醐味ではないでしょうか。
もちろん全てのケースが上手くいくわけではなく、つまずきから立ち直れないケース、辛い出来事が重すぎるケースもたくさんあります。でも、それでも彼らの人生は続いていきます。だからこそ、大人が彼らを信頼して期待すること。きっといいようになると信じること。そうすることで、彼ら自身が真っ暗な闇の向こうに、少しでも希望の光を感じてくれるのではないかなと信じています。
前回に引き続き、
私の仕事の一端を皆さんに
知ってもらえたら嬉しいです