【別館】さやま・こどもクリニック~教えて佐山先生~

Chart ②ADHDについて

第2話では、『ADHD=注意欠如・多動症』という凸凹でこぼこの傾向をもつ女の子、滝川悠里ちゃん(演、浅田芭路さん)が登場しました。今回はこのADHDについて、くわしくご紹介します。

第2話では、遠野志保先生
(演、松本穂香さん)に
ADHDの診断が告げられる場面がありましたね。

ポイント ①三種類に分類

ADHD(注意欠如・多動症)は、先天的な障害である発達障害(=凸凹)の一つです。その特性の違いから、主に三種類に分類されます。以下いずれか、あるいは複数の特性をもちます。

  1. 多動性:じっと着席できない、一方的に話し続ける、騒がしい、手足をもじもじさせる など
  2. 衝動性:順番が待てない、列に割り込む、突如怒る、相手が話し終わっていないのに答える など
  3. 不注意:ケアレスミス、注意散漫、整頓が苦手、忘れ物が多い など

ポイント ②支援の方法

なにより、適切な環境調整を行うことが大切です。「定型発達の人と同じ行動を身につけるためにはどうすればよいか」という発想で考えると、失敗することも多いといわれます。それよりも、「特性を理解して、最初から問題が起きないための環境調整をする」ことが大切です。
たとえば、忘れ物のないように荷物はまとめて一つにする。遅刻しないように友人と一緒に登校する。スマホのアラーム、リマインド機能を活用する。などが挙げられます。
具体的に、いくつかの支援方法をご紹介します。

1.環境調整

気になる張り紙がある、窓の外から声が聞こえる、きょうだいが何か楽しそうなことをしている、といったことが、良くいえば「興味をひく」、悪くいえば「気が散る」きっかけになります。そこで教室であれば掲示物を減らす、周りが見えないように一番前の席にするなどの対応を取ることがあります。

2.ワーキングメモリへの支援

ワーキングメモリとは、何か作業を行う際に必要な記憶力をいいます。その記憶をもとに思考や展開をすることで、次の作業が進みます。ADHDではこのワーキングメモリの働きが弱いため、頼まれたことをすぐ忘れてしまったり、一度に二つ以上のことを処理するのが苦手だったりします。
ワーキングメモリの弱さを補完するためには、してほしいことを複数一度に伝えるのではなく、一つずつ具体的に伝え、できたら次の一つ、と小分けにします。また、アイテムを活用して記憶の外部化を図ることも有効です。メモ(手書き、スマホ)、写真、ボイスレコーダー、マニュアル、計算表など、生活、学習、仕事をする上で必要なアイテムを活用して補うことが大切です。

3.報酬の活用

「約束を守れたら or 時間を守れたら」→「ほめてもらえる」「好きなおかずをリクエストできる」「○○(ゲームなど)ができる」といった具合で報酬を設定することで、適切な行動を取ることができます。本人にとっても成功体験を積むことができますし、また、少し大きい子であれば「どんな報酬であれば自分がやる気になるのか」が分かるという自己理解にもつながります。

4.薬物治療

ADHDは、発達障害の中で唯一、特性に対して直接的に作用する薬物治療が認められています。必要に応じて適切に服用することで、症状の改善につながります。

5.心理的支援

ADHDの子は失敗をして怒られることも多いですから、一つずつできたことを確認して(場合によっては手伝ってあげながら)、都度「できたね」というフィードバックが大切です。そのためにも1.~4.の方法を大人が持っていることが重要になります。

次回予定

発達障害の三種の分類のひとつ、ASD(自閉スペクトラム症)について