【別館】さやま・こどもクリニック~教えて佐山先生~

Chart ④摂食障害について

第4話では、摂食障害に悩む女子高生・古川朱里さん(演、片岡凜さん)が登場しました。今回はこの摂食障害について、くわしくご紹介します。

摂食障害は
こころの病気のひとつです

ポイント ①摂食障害とは?

心の病気=精神疾患のひとつで、食事量や食べ方などに異常が続くことで、体への影響(体重の増減)と、心への影響(自身の体重や体型への捉え方)が起こる病気です。
摂食障害と聞くと、イコール拒食症をイメージされる方も多いかもしれませんが、それだけではありません。食事を摂れない症状だけではなく、自身で食事量をコントロールできずに食べ過ぎてしまう、あるいは食べたものを自ら戻してしまうなど、個人によって、その症状は様々です。

日本で医療機関を受診している摂食障害の患者は、年間21万人とされています。このほか、治療を受けたことがない方、治療を中断している方が多数いることがわかっています。(出典:厚生労働省ホームページ)

痩せたいと思うこと自体は普通のことですが、問題は、摂食障害という病気のせいで、その痩せたいという気持ちがコントロールできなくなり、拒食、過食、嘔吐などを繰り返してしまうことにあります。
合併症として、皮膚がボロボロになったり、髪が傷んだり、脳が痩せて集中力が低下することなどがあります。心疾患や多臓器不全、自殺も含めると実は死亡率の高い精神疾患です。
また、最近は「回避・制限性食物摂取症」という、ボディイメージの歪みや食べ物へのこだわりが見られない摂食障害も注目されています。この一群では、食べることへの関心を失うことや、食べると嫌なことがあるという考えが見られることがあります。

ポイント ②その原因

ハッキリとした病因は解明されてはいませんが、現在も多くの研究が進められています。一般的には、脳を含めた生物学的要因、心理的要因、環境など社会的要因が複雑に絡み合っていることが推測されています。

様々な要因からこころの不安定さにつながり、それが摂食障害となる場合も多いです。日々を生きていく中では不確定な要素も多く、上手くいかないこともあります。ですが、ダイエットはハッキリと成果が数字にも表れるので、自信や自己肯定にも繋がります。体重を減らすことが自尊心の源になってしまうと、途中でやめることもできなくなってしまいます。

そうなると、周囲から食事を強要されたり、十分痩せている(痩せすぎている)と言われたりしても、ボディイメージが歪むので、本人は、自分は太っていると本気で思い込んでしまう場合も多く、そうなると本人は治療を望みません。
医師が治療に力を注いでも、全く食事を摂ってくれなかったり、食べているフリをして食事を捨ててしまったり、モニタリングに非協力的だったりすることも、少なくありません。

ポイント ③治療で大切なこと

身体面のケアだけではなく、しっかりと、こころに寄り添う治療を心がけることが大切です。
患者さんは自分の苦しみを「体重をコントロールする」ことで表現しようとします。
なので、それに巻き込まれないように、でもしっかりと付き合っていく必要があります。

一番恐いのは、患者さん本人が孤立してしまうこと。医師との信頼関係が失われ来院を拒絶されたら、手が届きにくくなってしまう危険もあるため、しっかりとこころに寄り添い、医師との信頼関係を築くことが大切です。
さらには、家族やケア提供者の摂食障害に対する理解と協力があると治療を進めやすくなりますので、家族への説明や支援も行います。
健康状態に関わるから周囲は焦りますが、食べないことに対して叱責したり強要したりせず、本人の苦しみに寄り添いながら応援するのが大事です。
周囲は治療の過程で体重が戻っていくことを『良いこと』と捉えますが、本人は逆にこれが辛いため、その辛さを理解しながら応援する必要があります。

また摂食障害の治療に要する時間には個人差があって、中には10年以上経過しても良くならず、慢性化してしまう方、一度は寛解が認められたとしても、再び人生で躓いてしまった時に再発する方もいます。長期的な視点での治療が大切です。

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