

2007年1月19日
お年寄りがお年寄りを介護する、いわゆる「老老介護」の悲劇が後を絶たない。介護疲れによる殺人・心中事件が、去年30件を超えた。なぜ悲劇は起こるのか?老老介護の現状を取材した。
大阪・守口市に住む近藤房子さん(74)は、2年前に脳の細胞が破壊される「進行性核上性麻痺」を発症した。房子さんは下半身の自由がきかず、トイレに行くにも夫の信二さん(75)の助けが必要だ。発病をきっかけに、仕事一筋で、家のことはすべて妻に任せてきた信二さんは「主夫」に変身した。房子さんは去年、最も重い【要介護5】の認定を受けたが、信二さんが24時間付きっ切りで介護に当たっているため、介護サービスはほとんど利用していない。
男性介護者の多くは「全力投球」する。それは、介護に燃え尽きる危険もはらんでいるのだ。さらには信二さん自身も20年前に脳梗塞で倒れ、去年は肺の手術をしたばかり。信二さんも要支援の認定を受けている。
病人が病人を介護する―――――。老老介護には、このようなケースが増えている。
奈良市に住む中井猛信さん(69)は長い間、妻の介護を続けてきた。妻の昌子さん(67)は57歳の時に「若年症認知症」と診断され、徘徊を繰り返した後、4年前に寝たきりとなった。【要介護5】の認定を受けている昌子さんは、口から食べ物を飲み下すことができず、1日3回、胃に直接チューブをと通して栄養を摂っている。4時間おきのオムツ交換のため、猛信さんの睡眠時間は4時間半しかないという。「(介護は)辛いんですよ。誰にも言えない」と語る猛信さん。悩んだ末、猛信さんは妻の認知症を親戚や近所の人に公表。週5回、ヘルパーさんに来てもらう生活を選んだ。
一人で悩み、心身ともに疲れてしまう介護者たち。それこそが悲劇を招く最も大きな原因だという。現在、介護人口は全国に440万人で、そのうち在宅介護は257万人。この数は高齢化社会に伴い、さらなる増加が予想される。各都道府県の自治体にある介護福祉課などに相談し、一人で抱え込まないことが大切だ。