

2007年3月7日
高齢化社会を迎えた日本。医療費は増加の一途をたどり、国民健康保険は5年後に1兆円もの歳入不足になると予想され破綻寸前といわれている。そんな中、10年間で老人医療費を削減して注目されている村がある。人口約5600人、3年前に市町村合併した長野県東御(とうみ)市・旧北御牧村だ。大幅な老人医療費削減に成功した裏には、ある施設の存在があった。
スポーツ施設、福祉施設、温泉診療所が並んだ複合施設。80歳の小林美代子さんは、5年ほど前からここへ通い始めた。診療所では日常生活でどのようにすれば良いかアドバイスを受け、プールでは水中リハビリを行っている。ヒザ関節症で足が動かなかった小林さんは、ここへ来てから正座もできるようになったという。診療所では、人間の中にある“自然治癒力”を信じることを出発点にしていて、診療所長の久堀周治郎医師は「関節が弱くなったとき、痛み止めというよりは、まず“生き物”としての人間の基本的な動作を回復する」と話す。温泉に入ってから、ゆったりすることが身体と心に及ぼす効果も大きいのだ。小林さんは、「ここへ通っていなかったら寝たきりになっていたかもしれない。(この施設が)命の恩人だと思っている」と語った。
施設内にある「身体教育医学研究所」が果たす役割も見逃せない。部長の岡田真平さんは、“薬ではなく日常のケアが大切”という考えを住民に浸透させるために、様々な取り組みを行っている。この日は、山の上の公民館まで介護予防体操の出前授業に出かけた。2週間に1度のこの日を、みんな楽しみに集まってくる。さらに教えた体操を家でもやってもらおうと、村営のケーブルテレビでも1日3回ビデオを流していて、もう6年も続けられている。
施設がなかった94年から村が合併する10年間に、長野県の老人1人あたりの医療費は年間10万円近く増えたが、ここ北御牧村では1人あたり4万円も少なくなっている。医療・福祉・スポーツ・教育と、これまで独立して行われてきたものがつながり始め、楽しく元気に老後を過ごせる環境が整ってきたこと。そして“自分の健康は自分で守る”という考えが浸透してきたことが、老人医療費の削減につながってきたのだ。