

2007年3月9日
モーターパラグライダーに乗ってハイビジョンカメラで超低空撮影に挑む、飛行撮影家・矢野健夫さんのシリーズ第8弾。
今回は世界自然遺産の登録に向けて脚光を浴びる小笠原諸島を飛んだ。
フェリーに乗ること約25時間。東京の南、1000キロに点在する大小32の島々からなる小笠原諸島。最も大きな「父島」(周囲約30キロ・面積24平方キロメートル)には、約2000人が暮らしている。世界有数の透明度を誇る、美しい海に囲まれた父島。その一方で、森や海には今も砲台や沈没船が残り、戦争の爪あとが生々しく残っている。
1年の平均気温が23℃という温暖な亜熱帯気候は、豊かな動植物を育む。なかでも「オガサワラオオコウモリ」は、天然記念物にも指定された小笠原でしか見られない貴重な固有種だ。"東洋のガラパゴス"と例えられるほど、手付かずの自然が溢れた島々。1年中、海にはイルカが戯れ、冬には繁殖期を迎えたザトウクジラの雄大な姿が見られるという。海底火山の爆発で誕生した小笠原諸島は、一度も他の大陸と繋がったことがない"生まれついての島"だ。江戸時代の後期に人が入植するまで、島はまったくの無人だった。
父島の南西1キロほどにある「南島」。隆起したサンゴ礁と、侵食された石灰岩でできたこの小さな島は、現在、自然保護地区に指定されている。外来種などから生態系を守るため、人の上陸は厳しく規制され、島にある全てのものが持ち出しできないようになっている。小笠原の自然が長い年月をかけて作り上げた、美しい楽園のひとつなのだ。
南島をあとにして、沖へと向かった矢野さんはザトウクジラのカップルに出会った。日本で最初にホエールウォッチングが行われたという小笠原。ザトウクジラは毎年2月から4月ごろまで繁殖期に回遊してくるが、今年は例年に比べて多く観察されているという。
次に目の前に広がったのは父島最南端の海岸、千尋岩(別名・ハートロック)。船も寄せ付けない、高さ100メートル以上の断崖絶壁が続く。さらに島の奥へと向かうと、そこには父島で暮らす人々でさえほとんど踏み入ったことがない、亜熱帯の神秘の森が現れる。オガサワラピロウやタコの木など、厳しい環境に適応しながら、独自の進化を遂げてきた多くの植物で満ちている。
青い空、深い森、そして澄んだ海。