

2007年3月20日
山口県美祢市に来月、受刑者の過剰収容の問題を解消するための新しい刑務所「美祢社会復帰促進センター」が開設される。全国で初めて法務省と民間企業が共同で運営するこの刑務所には、刑期が5年以下で初めて刑務所に入る男女1000人が収容される。売りは「ハイテク」と「地元との共存」。
受刑者は位置を知らせる名札を身に着け、それによって刑務官がいなくても1人で歩くことができるが、その名札と200カ所に設置されたカメラで行動は常に監視される。また、名札の取り替えを防ぐため、指の静脈を使って本人確認をする。
刑務所の周囲2キロに高い塀はなく、二重に張りめぐらされたフェンスがあるだけだが、フェンスは指がかからないようになっていて、振動センサーもついているため、手をかけた段階で警備室に伝わる。受刑者が生活するのは、雑居房ではなく、広さ4畳程度、テレビとベッドがついた個室。鉄格子の代わりに強化ガラスを使用していて、一般の社会の生活と同じようにしているという。
新たな試みはもう一つある。全国の刑務所で始めて導入される職業訓練だ。刑務作業を短縮し、受刑者はパソコンや点字・手話などの技能を一日2時間半学ぶ。
建設から運営までを大手警備会社「セコム」を中心とした企業グループが行い、48億円のコストダウンに成功した。しかし、受刑者への対応の違いには、多少の戸惑いもあるという。法務省PFI推進班の吉野智専門官は次のように話す。「民間の方々は、サービスを提供する"お客さん"と受け取っているので、現場の職員は非常にギャップを感じていると思う」。
そもそも、なぜ美祢市に新しい刑務所が作られることになったのか。かつては炭鉱の町としてにぎわっていた美祢市だが、1970年に閉山してからは過疎化が進み、人口は4万人から1万7000人までに落ち込んだ。そこで美祢市は、炭鉱夫たちが住んでいた住宅の跡地に刑務所を誘致したのだ。受刑者と職員が増えることによって、7000万円あまりの地方交付税が支払われるという。
かつて刑務所誘致に反対だった地元住民も、今では刑務所に期待を寄せている。刑務所のそばに、飲食店や農産物を販売する商業施設を建てようというのだ。この刑務所では、全職員350人のうち54人が美祢市から採用された。