

2007年6月6日
厚生労働省は4月、「将来もらえる年金額は増える」という試算を出した。果たして本当なのか。現在、平均的な65歳の元サラリーマン夫婦は、月に23万円の年金を受け取っている。国の試算では、いま40歳の人が65歳になる頃には、現在の価値にして28万円。そして現在20歳の人は、将来37万円を受け取ることができるという。
年金制度にとって、重要な意味も持つ出生率。去年、予測を超えるスピードで少子化が進んでいることが判明した。今の年金制度は、現役世代が納める保険料によって、高齢者を支えている。少子化で現役世代の人口が減れば高齢者を支えきれないため、給付金を減らすことなどが必要になってくる。それにも関わらす、国は"バラ色の年金の未来"を試算する。
実は、そこにはカラクリがある。試算には、「最近の経済動向を踏まえた」とあり、そのひとつが賃金上昇率だ。国の推計によると、今後100年間で賃金は平均2.5%、毎年上昇するという。100年後、サラリーマンの平均賃金は現在の価値で2000万円を超える金額になる。「少子化で年金を支える世代の人口が減っても、賃金が上がればより多くの保険料が集まり、結果として受け取る額も増える」という訳だ。社会保険庁企画課の川路暢仁課長補佐は、「制度設計は厚生労働省がやっているが、物価や賃金の上げ下げを年金額に反映させているので、心配はいらない」と語る。
国が見込む賃金上昇率は、今年度2.5%。この数字は、民間の予測(みずほ総研0.5%、大和総研0.8%、三菱総研0.0%)と大きな開きがある。資産は妥当なのか?みずほ総合研究所・シニアエコノミストの山本康雄氏は「企業が業績を上げても、グローバルな競争が激しいので賃上げを抑制している状況。そういう意味でも、国の前提はかなり甘い」という。厚生労働省には何度も取材を申し込んだが、インタビューには応じてくれずに文書で回答してきた。そこには「実質GDP(国内総生産)上昇により、賃金上昇率が上昇する」と書いてあった。つまり、日本の景気が全体として良くなり続けるので、賃金もそれにつられて上がり続けるということだ。
さらなるカラクリがある。年金保険料のうち、高齢者への給付に回されない分は積立金として運用される。その額は150兆円。運用によって得られる利益は、年金を支える柱だ。