

2007年6月12日
先月初め、巨大な竜巻がカンザス州グリーンズバーグを襲った。街は壊滅状態になり、人口1400人のうち10人が死亡した。世界の竜巻発生数の80%が集中するというアメリカ。そのアメリカには、命がけで竜巻の進路を予測するテレビ局のチームがいる。
オクラホマ州・オクラホマシティには、全米のテレビ局の中でも竜巻の予想に関して、視聴者から絶大な信頼を得ている放送局「KOCO TV」がある。KOCOテレビには4人の気象予報士と、竜巻の追跡を専門とするスタッフが14人所属し、視聴者にリアルタイムで情報を発信している。我々は気象予報士の依田司とともに、KOCOテレビの竜巻追跡チームに密着した。
この日、オクラホマ州西部に活発な寒冷前線が接近し、KOCOテレビは4チームの出動を指示した。我々は、10年以上のキャリアを持つロバート・ヘドリック氏の竜巻追跡チームに同行した。彼らは2人1組で行動し、局内にいる予報士と連絡を取り合いながら竜巻を探す。KOCOテレビでは、最新鋭の「ドップラーレーダー」(雲が動く方向を知るためのレーダー)を駆使して、竜巻を追いかけている。
竜巻警報が発令された。周辺へ向かうと、そこには想像を超える巨大な雨雲が広がり、中心部では猛烈な雷雨が発生していた。 "スーパーセル"とよばれる巨大な積乱雲で、高度1万8000メートル、直径30キロにも及ぶ雷雲だ。強烈な上昇気流を伴った雲の一部が急速に回転し、ロウト状に垂れ下がって地面につくと竜巻になる。あちこちで雲が低く垂れ込み始め、激しい上昇気流が地上の塵を巻き上げている―――。突然、激しい風が吹き、追跡チームは車内に避難。危険が去るのをじっと待つしかなかった。幸いこの日、竜巻が発生することはなく、KOCOテレビも速報の体制を組むには至らなかった。ヘドリック氏は「現地から視聴者に竜巻の位置を知らせる。追跡チームの責任は重大だ」という。視聴者の周辺で起きる緊急事態をいち早く察知し、被害を最小限に食い止めるのが竜巻追跡チームの使命なのだ。
1999年5月には、史上最悪といわれる竜巻がオクラホマ中心部を直撃した。KOCOテレビは通常放送をやめて、12時間連続で速報を流し続けた。オクラホマでは、テレビの気象情報の視聴率が85%を記録したこともある。