

2007年6月21日
オリンピックを控えている中国の北京では、メインスタジアムの建設が24時間フル稼働で行われ、街は急速に様変わりしている。その街の近代化に一役かっているのが「ステンレス」だ。バス停は鉄から錆びないステンレスへと変わり、来年開通する地下鉄5号線は、車両も内装もステンレスだ。中国人は光る素材を好み、富裕層には20万円もするステンレスのシステムキッチンが飛ぶように売れる。最近は高く売りさばけるため、中国国内でステンレス泥棒まで現れた。中国は今、まさに"ステンレスバブル"絶頂期だ。
今年5月、中国人バイヤーの洪明保さんが千葉県のスクラップ工場へやってきた。洪さんは目利きの良さで、業界で一目置かれている男だ。ここには、工場の解体で出たスクラップが山のようになっている。「ステンレスと銅が狙い目」だという洪さん。ステンレスは光沢があり、錆びにくいことから"金属の王様"と言われ、鉄の10倍以上の値段で取引されている。洪さんは一山を買うことにした。値段は、ステンレスなどの割合を見た目と勘で予測して決める。一山2000トンを約5000万円で契約した。
ステンレス・スクラップは、東シナ海をわずか2日で渡る。中国南部・台州市の港には、一山5000万円のスクラップを積んだ船が到着していた。台州は世界一のリサイクル基地で、海外のありとあらゆるスクラップを飲み込んでいる。
日本で買い付けたスクラップが、洪さんの工場へと運ばれた。金になるステンレスはどれくらい出てくるのか…。何十人もの人が、ネジの1本まで徹底的に分解して素材別に分ける。ステンレスは、平均で全体の10%ほどしか手に入らない。今回は、予想以上にステンレスが集まった。ステンレスの相場は、原材料であるニッケルの相場に連動する。ニッケルが1キロ当たり1ドル上がれば、船1隻当たりのステンレスの値段は約150万円つり上がる。この2年間は異常なほど相場が上昇し、洪さんは何億円も儲けたという。「相場が変動するのでリスクがある。だからこそお金が儲かる」と洪さんは言う。
ステンレス・スクラップを山積みにしたトラックが、中国各地へと向かう。江蘇省にある「張家港ポスコ社」は中国第3位のステンレスメーカーで、最新鋭の設備を誇っている。