

2007年10月1日
今年3月の教科書検定で、高校の教科書から集団自決における"日本軍の強制"を示す記述が削除された。先週、沖縄では県民大会が開かれ、11万人の県民が検定の撤回を求めた。県内41すべての市町村議会と県議会が撤回要求を決議。そして、これまで口を閉ざしてきた集団自決の体験者たちも、この問題をきっかけに重たい口を開いた。
座間味島で暮らす宮平春子さん(80)の証言は、軍の命令を示す新たな証言として、県議会も聞き取りを行っている。
1945年3月にアメリカ軍が上陸。その直前に集団自決が相次いで起きている。宮平さんは当時、村の助役で軍との連絡役だった兄が、父親に語った言葉を鮮明に覚えていた。
「もう(米軍の)上陸は免れないから。軍の命令で自決することになっているから、覚悟をして一緒に死にましょうね」
兄は、近くの防空壕で妻と幼い子どもたちと命を絶った。
なぜ、今回の検定で5社7冊の教科書から一斉に"軍の強制"が消し去られたのか・・・。
文部科学省は、教科書調査審議会の決定だとしてきた。その審議会の委員は125人だが、日本史の担当は14〜15人。しかも近現代史の専門家は、わずか4人だ。戦後の史実を覆すのに、どんな議論がなされたのか。審議内容は非公開だが、日本史担当の1人である筑波大学の波多野澄雄理事は、こう証言する。
「特に議論はなかった。沖縄戦といった争点について、専門家の意見を聞く機会があっても良かった」
日本史の審議が行われたのは、わずか2回。それも古代から現代まで全10冊分をチェックするため、審議は文部科学省側の説明だけで終わることが多いという。"集団自決"についても、最近の学説や裁判で軍の命令の有無は意見が分かれていたため、教科書会社に修正を求めると説明しただけで終わっていた。審議会委員である筑波大学の波多野澄雄理事は「軍の強要や誘導という部分がなくなってしまったことに、非常に驚いた。軍の関与を否定するような書き方は、沖縄戦の実態にそれこそ合っていないと思う」と語る。
審議会を受けて、文部科学省は早々と執筆者と出版社に対して次のように修正を求めた。
「最近、『軍の正式な命令はなかった』というのが固まりつつあると考えている。『集団で自決を強いられたもの』だと。