

2007年11月15日
2007年11月15日、小学6年生の前原海斗くん(12)は両親とともに東京地裁へ向かった。交通事故の加害者と保険会社を相手に裁判を起こし、その第1回目の口頭弁論が行われるためだ。「事故のあと、毎日頭がすごく痛くて、とてもつらかった。でも僕の病気をわかってくれる人はいなかった」という海斗くん。両親が共働きでまかなってきた治療費等は、2000万円を超えた。
海斗くんが事故にあったのは今から3年前の小学3年生のとき。歩道にいたところをバックしてきた車にはねられた。事故当初の検査結果は足の骨折だけだったが、事故から4日後、激しい頭痛に襲われるようになった。病院へ行ったところ、海斗くんは『脳脊髄液減少症』と診断された。
脳脊髄液は、脳と脊髄の周りを循環している。ところが体に強い衝撃を受けると髄液が漏れ続けてしまうことがあり、その結果、脳の位置がずれて激しい頭痛や視力の低下など、さまざまな症状を引き起こす。
しかし、加害者が任意で加入していた保険会社は「現時点で交通事故との因果関係が証明されなければ、ここから先の治療費は保証できない」として、半年で医療費の支払いを止めてしまった。脳脊髄液減少症は、いまだに診断基準が確立されていない。
この病気には、効果的とされる治療法がある。『ブラッドパッチ』と呼ばれるもので、髄液漏れの近くに本人の血液を直接注入し、血の固まる性質を利用して穴をふさぐ。海斗くんは最年少でブラッドパッチに臨むことになった。
1回にかかるブラッドパッチの費用は30〜40万円で、健康保険は適用されない。しかも1回で済むわけではなく、髄液漏れのふさがり具合によって回数を重ねなくてはならないこともある。海斗くんは去年5月、このブラッドパッチを受けた。
そしてブラッドパッチを行ってすぐ、頭痛が治まった。しかし喜びもつかの間…小児科にかかると、事故後、海斗くんの身長が伸びていないことが判明した。脳が圧迫を受け続けているため、成長ホルモンを分泌する「脳下垂体」が萎縮しているというのだ。海斗くんは、一生ホルモン注射が必要と宣告された。週に6日、ひと月の注射代は約30万円にも及ぶが、健康保険は適用されない。海斗くん「『なんで僕はこんな体になったんだ』って。毎日『悔しい』と泣いていた」と母親はいう。