

2007年12月5日
先週、厚生労働省が生活保護基準の切り下げを打ち出した。その理由として挙げられたのは、『一般の低所得世帯と比較して、生活保護の水準が高い』ということだった。
これまで、生活保護費は年収の下位10%層の日常生活費とほぼ同じだった。ところが、格差が拡大して低所得層の収入が減った結果、生活保護費のほうが高くなってしまったのだ。
北九州市で一人暮らしをし、無年金で生活保護を受ける79歳の松永アヤ子さん。生活保護費は、家賃を除いて月に約7万2000円だ。これに対し、同年代の低所得者の日常生活費は月に6万2000円あまり。この1万円の差が切り下げの根拠だが、松永さんは「1日2食くらいで辛抱して、がんばっている。お風呂も1日越しに入っていたけど、今はシャワーだけ。これ以上(生活保護費が)下がったら、何を節約すればいいのか」と語る。
保護費切り下げの影響は、生活保護世帯だけにとどまらない。
小学生の子ども2人を持つ34歳の村木香織さん(仮名)。年収は生活保護世帯と変わらないが、今回の切り下げによって、これを目安としている公立高校授業料の減免基準が下がる可能性が出てきた。「ちゃんと高校まで出してあげられるか不安。それが子どもたちのせいではないので、すごく申し訳ない」と村木さんはいう。
このほか"最低賃金の底上げ"や"住民税の非課税ライン"、"国民健康保険の減免基準"などにも影響する。これらの生活保護に連動する基準が下がれば、低所得層の日常生活費がさらに減り、生活保護費がさらに切り下げられるという『貧困のスパイラル』が最悪のシナリオだ。
格差は、参院選敗北につながった苦い問題のひとつだが、それにも関わらず生活保護基準の切り下げに切り込まざるを得ないのは、政府の「骨太の方針」で社会保障費の増え幅を毎年2200億円ずつ削減することが決まっているからだ。
この生活保護費削減をめぐって、国が"優等生扱い"をしていたのが福岡の北九州市。ところが、保護率を抑えることを優先するがあまり、本来の目的を見失う実態があった。生活保護を担当していた元北九州市職員の藤藪貴治さんは、「私が担当していた80歳くらいのおばあさんが、自宅で孤独死されていたことがあった。このとき、同僚のケースワーカーに"1件減って良かったね"と祝福されたことがある」と証言する。