

2008年1月10日
日本の4割しかない国土に1億4000万人が住み、世界でも貧しい国のひとつ、バングラデシュ。国土の大半が標高10メートル以下で、3本の大河がベンガル湾に注ぎ、小さな川が毛細血管のように広がっている。今、この国は地球温暖化によって国土が失われる危機に晒されている。朝日新聞の中山由美記者が取材した。
例年、6〜9月に南西部から季節風がインドのメガラヤ高地にぶつかることで雲が発生し、雨季に大量の雨を降らせる。それがバングラデシュに流れ込み、毎年洪水が起きる。しかし去年9月、いつもなら雨季が終息に向かい水が引くこの時期に、誰もが予想しなかった2度目の大洪水が人々を襲った。この洪水により、国土の半分が水没してしまった。
なぜ、2度も洪水が起きたのか?
去年は9月になっても季節風が弱まらず、雨季の終わりにも関わらず、大量の雨が降ったためだ。地元の専門家は、これを地球温暖化の影響と見ている。
度重なる大洪水は、人々の体を蝕んでいる。ダッカにある国際下痢症研究センターには、大洪水の直後、1日で1045人もの患者が詰め掛ける前代未聞の事態となった。8月全体では、患者は2万人を超えた。長崎大学・熱帯医学研究所の橋爪真弘研究員は「ひどい洪水になるとトイレも井戸水も水没する。それで汚染され、余計に下痢になる」と話す。
さらに、洪水に拍車をかけているのが海面上昇だ。名古屋大学・環境学研究科の梅津正倫教授は「(ベンガル湾の)海面が上昇すると川の水が海に流れにくくなり、水が溢れやすくなる」という。バングラデシュでは、海面が1メートル上昇すると国土の18%が水没し、将来、2000万人以上に甚大な被害を及ぼす可能性がある。
しかし、温暖化による被害はこれに留まらなかった。
11月、追い討ちをかけるようにサイクロン“シドル”が直撃した。カテゴリー4を保ったまま上陸。944hPaで最大瞬間風速69メートルを記録し、史上最大規模となった。
2度の大洪水とサイクロンによる被災者は2000万人以上となり、支援物資は追いつかず、被災者は救援物資に殺到した。
毎年、雨季の前後にインド洋で発生するサイクロンは、温暖化の影響で巨大化するという。気象庁が発表しているインド洋の海水温の推移を示すデータを見てみると、この100年で明らかに上昇傾向にある。