

2008年1月15日
三大成人病の中でガンに告ぐ死者を出している心臓病。中でも心筋梗塞(こうそく)は、発症から1時間以内に治療を受けないと、約40%が死亡するとされる、まさに死に直結する恐ろしい病気だ。早期発見、早期治療がすべてという心筋梗塞の"前兆"とはどんなものなのか。治療の最前線に密着した。
福岡県北九州市にある小倉記念病院では、24時間いつでも心臓病の急患を受け入れていて、年間2500件のカテーテル治療を行っている。
午前10時、病院に77歳の男性が運ばれてきた。自宅から散歩に出ようとしたところ、突然、胸の痛みに襲われたという。病名は急性心筋梗塞だった。
心臓には心筋に酸素や栄養素を送るため、左に2本、右に1本の【冠動脈】という太い血管がある。急性心筋梗塞とは主に、脂肪などが溜まって動脈硬化を引き起こした冠動脈の内側に血の塊が詰まることで起きる。血流が途絶えた心筋は、酸欠になって壊死し始め、放置しておくとやがて死に至る。
この男性の場合は、発症からすでに3時間が経過していて、一刻も早い治療が必要だ。院長の延吉正清医師によるカテーテル治療が始まった。足の付け根から心臓の冠動脈に向けて、直径2ミリのカテーテルが挿入されていく。X線画像を見てみると、この男性の場合は末端まで血が流れていないことがわかった。さらにこの男性は、3本ある左冠動脈のうち、2本が動脈硬化などでほとんど機能しておらず、奇跡的に右冠動脈1本だけで血流が支えられているという極めて稀なケースだった。そして、その"最後の頼みの綱"が、完全に詰まろうとしていたのだ。
治療中、男性の容態が急変した。完全に右冠動脈が詰まり、心臓が止まってしまったのだ。脳に血液が流れなくなり、意識もなくなった。血圧を上げるポンプと心臓マッサージによる蘇生措置が続く―――。
男性は病院に運ばれた際、「(胸の痛みは)今までに何回もあった」と話していた。延吉医師は「(心筋梗塞の)前兆が(発症の)前日ぐらいから、『胸がおかしい』とか『胸が痛かった』という症状がある。(症状は)一過性で5〜10分で治るから『これは働きすぎだ』とか普通は思っている」と話す。
こうした前兆は、一般的に狭心症と呼ばれる。冠動脈が動脈硬化で狭くなり、一時的に血流が滞ることで、様々な痛みを生じる。