864 | 865 | 866 | 867 | 868 | 869 | 870 | 871 | 872 | 873 |

2008年3月12日

医者に行けない高齢者たち〜密着!医療格差の現場

医者に行けない高齢者たち〜密着!医療格差の現場

高齢化、格差社会が進む中、国民健康保険料を支払えない世帯が増えている。大阪の東大阪市では、約2万6000世帯が保険料を滞納していて(平成18年度)、その数は加入世帯数の4分の1にも及ぶ―――。

6000軒もの町工場がひしめく東大阪市の一角にある「楠根診療所」では、患者の7割が65歳以上のお年寄りだ。窓口には、医療費の相談に訪れる人も増えている。そんな医療費負担にあえぐ患者たちを見守り続けているのが、所長の高橋泰行医師だ。「経済的には、ものすごく深刻です。手遅れになったり、十分な療養環境を援助できないという無念さはある」と高橋医師は語る。

保険証がないため、手遅れになるケースも少なくない。去年の秋に診療所に担ぎ込まれた山下周造さん(仮名・63歳)は、末期の食道がんで余命半年と診断された。若い頃から建設作業員として働いていた山下さん。2人の息子がいたが、今は行方がわからず一人で暮らしている。
体の異変には1年前から気付いていたが、治療費も保険証もないため、病院へは行かなかった。そして容態が悪化し、診療所に担ぎ込まれたのだ。高橋医師は、お金がなくても治療が受けられるようにと生活保護を申請したが、病状はすでに手遅れの状態だった。
医療費が払えず、手遅れになる―――。高橋医師はそんなケースを防ぐため、生活が苦しい患者には、生活保護の申請をすすめてきた。生活保護を受けると、患者の医療費負担はなくなり、診療所には公費から医療費が支払われるのだ。診療所の患者の1割が、生活保護を受けている。
1日の診察が終わったあと、高橋医師は山下さんの親戚などに電話をかけ、行方知れずの息子を探していた。「いつ何が起きるかわからない。吐血したり喀血したりして、意識がなくなったら遅いので」と。

病気によって、幸せな生活が一変してしまった家庭もある。4年前、脳卒中で倒れた近藤昭夫さん(仮名・60歳)。昭夫さんは、建設機械のオペレーターとして働いていたが、10年ほど前から体調を崩して仕事ができなくなった。そのため保険料が払えなくなり、6年前に保険証を取り上げられてしまった。妻の泰恵さん(仮名・60歳)は「保険は重要だけど高いから。私たちの収入では無理がある」と語る。
2人が保険証を再び手にしたのは4年前、昭夫さんが脳卒中で倒れたときだった。

  • 1
  • 2
864 | 865 | 866 | 867 | 868 | 869 | 870 | 871 | 872 | 873 |