859 | 860 | 861 | 862 | 863 | 864 | 865 | 866 | 867 | 868 |

2008年3月25日

団塊の世代に贈る(11)〜「あしたのジョー」

雑誌「少年マガジン」が発売されて、今年で50年目。1968年から連載が始まった「あしたのジョー」は、当時の若者のみならず、文化人にも熱狂的支持を受けた。彼らはジョーの何に惹かれたのだろうか?

この物語は、夢も希望も持たない一人の少年が、通称"山谷(さんや)"といわれる労働者たちの街を訪れるところから幕を開ける。
粗野で乱暴―――。およそ少年漫画の主人公にはふさわしくない矢吹丈。スポーツの爽やかさとは正反対の空気を漂わせる異色の漫画「あしたのジョー」は、初回から読者の目を釘付けにした。

「あしたのジョー」の連載から遡ること3年。「少年マガジン」編集長に抜擢された30歳の内田勝には、ある考えがあった。「ベビーブーム世代が中学、高校になって漫画を読むのを止めた。彼らの成長に合わせ、年齢層の高いターゲットを意識して漫画を作っていくようにした」と内田は当時を振り返る。
内田は大胆な改革に乗り出した。定番だった「笑顔の子ども」や「戦争もの」の表紙をやめ、当時大人気だったアーティストの横尾忠則に表紙のデザインを依頼。肝心の漫画は「巨人の星」などストーリー性が高い作品を次々と送り出した。内田の狙い通り、高校・大学生に支持されて「マガジン」は100万部を突破した。

そんな改革の極めつけともいえる作品が「あしたのジョー」だった。連載が始まった頃は、日本各地で学生運動の嵐が吹き荒れていた。少年院でボクシングに出会い、一人黙々と練習するジョー・・・。決して超人ではなく、優等生でもないその姿は"時代のヒーロー"として熱い指示を集めた。

しかしこの時、原作者の梶原を愕然とさせる出来事が起こった。
ジョーの生涯のライバルとなる力石徹が、ジョーより二回りも大きく描かれていたのだ。梶原は、二人を将来プロのリングで戦わせる予定だった。しかし、ボクシングには体重による階級分けがある。「(原作には)ジョーより大きいとか小さいとかは書いていない。プロになって戦う打ち合わせをしていなかったから、うっかり書いてしまった」とちばは語る。しかし、この行き違いこそが伝説の物語にするきっかけとなった。

食べ物はおろか一滴の水すら飲まない、壮絶ともいえる力石の減量シーン。読者はますます物語に引き込まれていった―――。そしてついに、二人は後楽園ホールで決戦の日を迎える。

  • 1
  • 2
859 | 860 | 861 | 862 | 863 | 864 | 865 | 866 | 867 | 868 |