

2008年3月27日
中国湖北省にある華井村(かせいそん)は人口2400人にも満たない小さな農村だ。しかし今、この農村に異変が起きている。農業用水が汚染され、作物が立ち枯れる現象が相次いでいるのだ。収穫量は、かつての2割に落ち込んだ。さらに、原因不明の病に悩まされる村民が続出している。今、この村で何が起きているのか?
華井村に住む江愛蘭さん(60歳)は、4〜5年前から手足の関節が変形し、歩けない状態になってしまった。原因はわからないという。身の回りの世話は夫がみている。
さらに取材班は、この村を撮影中に突然、不思議な光景を目撃した。村の中を歩く、白い布をつけた人々・・・それは葬式の行列だった。この日、また一人がんで村人が亡くなったのだ。村の共産党はがん患者リストを村民に公開していないが、この10年間で95人もの村民ががんで死亡している。
この村の共産党委員会の面々に村の中を案内してもらった。「用水路の両側の畑は農作物が作れなくなった。植えても次々に枯れてしまう。土壌自体が全部汚染されているからだ」と説明してくれたのは、陳敬炎さん。去年まで30年間、日本でいえば村長にあたる村の共産党書記を務めてきた。彼によると、原因は村の唯一の水源である用水路の水で、この水が水銀やカドミウム、ヒ素などの重金属によって汚染されているという。川には黄色い泥がたまり、川草も枯れてしまっている。
汚染の元になっているのは、村に隣接している工場だという。「大冶市有色金属公司」は、1950年代に作られた国有企業の金属精錬工場で、銅やアルミニウムなどを生産している。「中国トップ企業500社」にも選ばれた国家の重点企業だ。年間売り上げは100億元(1500億円)で、この地域にとっては最大の納税企業。従業員は2万人で、大きな雇用機会を与える重要産業だ。工場の排水は、村で唯一の水源である用水路に流れ込んでいる。華井村によると、工場の生産が増した2000年以降、汚染も酷くなったという。
村が作成した汚染状況報告書によると、村の多くの田畑がカドミウム、水銀などで国家基準を上回った。中には100倍以上もの数値が検出された。この報告書では「村の汚染された農作物を食べたり水を飲むと村民の生命にかかわり、環境が改善されない限り、人間の生活には適さない」と結論付けている。