

2008年4月23日
鹿児島・奄美諸島の最南端に位置する与論島。南海の洋上にキラキラと輝く周囲23キロほどのサンゴ礁の島で、あるプロジェクトが行われている。
海の中に沈められた直径1メートルのドーム状の金網。しっかりと海底に固定され、金網には陸から電流を送るためのケーブルがひかれている。
この小さな金網が、世界中で危機に瀕するサンゴを救う第一歩になるかもしれない―――。
プロジェクトリーダーの九州大学大学院の野島哲准教授は長年、世界中のサンゴの研究を行い、その危機を目の当たりにしている。「1998年、世界的なサンゴの白化が起こって、結果的には5〜10%のサンゴしか生き残れなかった。まだ大部分がそのままとなっている」と野島氏はいう。
世界中で急速に広がったサンゴの白化現象。サンゴに栄養分を与える「褐虫藻(かっちゅうそう)」と呼ばれる藻類が海水温の上昇に耐えられず逃げ出し、サンゴの白い骨格がむき出しになることだ。さらに白化が長期間続くと、サンゴ自身が死んで瓦礫となってしまう―――。沖縄市内から程近い海には、10年前には様々なサンゴが広がっていたが、白化が進み、現在は瓦礫となってしまった。
「背景には地球温暖化があると思う」と語る野島氏。サンゴは、温暖化の原因となる大気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を発生させるという"地球温暖化防止"の役割を果たしている。しかし、死んだサンゴはむき出しになった石灰岩で、蓄積した二酸化炭素を逆にどんどん放出してしまうのだ。
深刻なのは、海の中の生き物にとっても同じだ。サンゴ礁の海は、海洋面積全体の0.2%を占めるのみだが、海に生息する生き物の4分の1がサンゴ礁の自然に関わっているとされている。野島氏は「とにかく生きたサンゴ礁をできるだけ広く早く回復させたい。例えば10年とか短い単位で再生させようとすると、やはりどこかで人間の手助けが必要になってくる」という。
そこで今回、用いられたのが「電着技術」という方法だ。陽極と陰極とに分けられたドーム状の金網に微弱の電流を流すと、海中のカルシウムが陰極部分に「炭酸カルシウム」となって付着する。この炭酸カルシウムこそ、サンゴの基盤であるサンゴ礁と同じ成分なのだ。付着した炭酸カルシウムが広がり、1センチほどの小さな穴になったころ、産卵を終え幼生となったサンゴが流れ着くのを待つ。