

2008年8月5日
北京五輪のメインスタジアム、通称「鳥の巣」には、世紀の一大イベントのシンボルを見ようとする観光客が、連日押し寄せている。このメインスタジアムの周りは人工の池や川が取り囲み、オリンピック公園は水をふんだんに使った設計になっている。
『緑色奥運(グリーン・オリンピック)』―――"環境に優しい五輪"をテーマに始まろうとしている北京五輪。数ある五輪施設の周辺には人工の水辺が造られ、多くの緑が周りを埋め尽くしている。そして、それを維持するためにおびただしい水が使われている。
日中戦争勃発の地としても知られる廬溝橋。その下を流れる永定河には、ここ十数年の間、一滴の水も流れてはいなかった。しかし1カ月ほど前、橋を挟んだ約1キロもの区間に突然、水が蓄えられたのだ。近所の住民はこう語る。「自然に流れてきた水じゃないと思う。観光のためじゃないかな、皆に見てもらおうと…」
降水量が少ない北京は、水資源に乏しい街だ。中国当局は、五輪関連施設には水の使用量を最小限に抑える最新設備が備わっているというが、近郊の村々ではその煽りをうけた厳しい現実が横たわっていた。
北京市に隣接する河北省らん平県は北京近郊の米どころとして知られ、長年に渡って稲作を生業にしてきた地域だ。しかし我々を迎えたのは、稲穂たなびく水田どころか、見渡す限りのトウモロコシ畑だった。地元農民は「少し前は水田だった。北京に貯水するため(去年から)トウモロコシを植えるようになった」という。かつての豊かな水田地帯は、北京に水を供給するため、去年4月から稲作よりも水の使用量が少ないトウモロコシ畑に姿を変えていたのである。
人口1500万人を抱える巨大都市・北京。しかし一方では、急激な都市開発と人口増加から、一人当たりの水資源量は減少の一途をたどり、世界平均の30分の1以下とも言われる。北京市内を流れる代表的な河川でも水の流れはほとんどない。かつての川底では羊の放牧が行われていた。ここで羊を放牧する男性は「1992年ごろから水が減ってきて、7〜8年前にはなくなった。ダムから水が放流されなくなったからだ」と語る。
北京の水の70%近くは、市の北側に位置する2つのダムから供給されている。