

2008年9月23日
75歳以上を対象に今年4月に導入された後期高齢者医療制度。国民の理解が得られていないとして、当初から見直しの必要性が問われているが、今なお迷走を続けている。また政府が決めた医療費削減計画で、長期入院を前提とする病棟は診療報酬が激減。お年寄りの"切り捨て"は深刻な事態にまで陥っている。崩壊が進む高齢者医療の現場を取材した。
3年前、脳卒中で倒れた落合文次さん(85)。半身まひの後遺症が残り、東京の中野共立病院で治療を受けている。意識が回復して片言の受け答えもできるようになり、今は安定した状態だが、いつ急変するかわからないという。こうしたなか先週末、落合さんは家族とともに呼び出しを受けた。待ち受けていたのは「入院打ち切り」の通告だった――。
中野共立病院は医療費削減のあおりを受け、今月末に長期入院型の病棟を閉鎖せざるを得ない事態に追い込まれた。落合さんは、10月までに退院か転院しなければならない。落合さんの長男・真さん(51)は「リハビリも含めて良くしていただいている。そういう状態があるので、今の機能が維持できる。そういう条件を確保しないと、それこそ水も飲めなくなってしまう」と語る。
リハビリを受けないと筋肉が硬直していく。かといって24時間の自宅での看護はままならない。真さんは次の転院先として、医者のいる老人保健施設などにもあたっているが、高額なため、とても入れないという。
長男・真さん「最低でも1日5000円とか7000円かかり、月あたり20万円を超える支払いがかかる。一体いくら蓄えがあったら命が持つのか…」
長期入院型などの病棟に入院する患者55人のうち、ほとんどが退院を迫られている。なぜこうした事態になったのか。すべてはこの時から始まった――。
2年前に強行採決された医療制度改革。増え続ける高齢者医療の削減が目標となり、こうした長期入院型のベッド数を2012年までに38万床から22万床に減らすことが決まった。このため病院に支払われる診療報酬が激減、病院の経営が存亡の危機に立たされたのだ。中野共立病院の高津司院長は「(診療報酬の激減で)今でも赤字でやっているが、とてつもない赤字になってしまう。本当に悔しい、腹立たしい思いでいる。