

2010年7月23日
故人の人生を振り返りながら、その死を悼むシリーズ「さよなら」。今回は、30代半ばで帰らぬ人となった2人の人生をクローズアップする。
看護師の高橋梨香さん
盛岡市立病院で看護師の仕事に身を捧げた高橋さん。2005年、32歳の時、乳がんが見つかった。その体験を綴った闘病記『がけっぷちナース』を自費出版し、話題を呼んだ。梨香さんが、がんと診断された時、病気が見つかる1年前に出会った彼氏、歯科医師の高橋正さんがそばにいた。胸にメスを入れ、抗がん剤の副作用が出始めた時、梨香さんは正さんに別れ話を切り出したが、正さんは「病気になっても梨香さんがいい」と言ったという。5つ年下で、物静かな正さんは、すべてを受け止めてくれ、存在は頼もしかった。2人で過ごす、かけがえのない時間が闘病のつらさをやわらげた。それでもがんは体を蝕んでいき、2007年、肝臓と骨へ転移が見つかり、抗がん剤治療は再び始まった。激しい吐き気と脱毛の副作用に苦しむなか、死の恐怖に耐えられない夜もあったという。「治ることを信じてくれる人がいたからこそ頑張れた」と梨香さんは話す。
治療を続けながら、梨香さんは仕事をやめなかった。自ら患者になったからこそ気付いたこともあった。「忙しく仕事をしていた時は、患者さんの話を聞いてあげたくても先にやらないといけない仕事があった。前は冷たい看護師だった」と話す。そんな中、正さんから誘われたクリスマスイヴ。待っていたのは、プロポーズだった。梨香さんは、『今後も闘病につきあわせてしまう。自分がいなくなってからのほうが、彼の人生は長い』などと迷った。しかし、正さんは「自分で決めるし、背負えるものだったら背負わせて欲しい」と話したという。2009年11月22日、命のタイムリミットを感じながらも憧れ続けた結婚。梨香さんはこの瞬間を“奇跡”と呼んだ。
容体が急変したのは半年後のこと。亡くなる直前、正さんに残した言葉。
『正君には地球よりも重い愛をもらい、幸せをもらった。だからこそ、私がいなくなっても幸せに暮らしてね。