

2010年9月8日
国の医療費は、約35兆円に達し、今後も膨らみ続けると懸念されるなか、年間8800万円の医療費圧縮に成功した広島県呉市の秘策に注目が集まっている。膨張する医療費を抑制するヒントを探った。
呉市では、最近、薬代が安くなった人が相次いでいる。明田和久さん(78)も薬代が半額になった一人だ。薬代が安くなったのは、ジェネリック医薬品(後発薬)を使い始めたからだ。ジェネリック医薬品とは、製薬会社が発売した新薬(先発薬)の特許が切れた後に、他のメーカーが発売する薬の総称、いわば先発薬のコピー商品だ。主成分は先発薬と同じだが、開発費などを抑えられるため、価格は先発薬の2割から7割程度と安い。「飲むときも飲んだ後も(先発薬と)全然変わらない。値段が半額というのが一番のメリット」と明田さんは話す。
呉市でジェネリック医薬品が広がったきっかけは、市が国民健康保険の加入者に郵送した通知書。そこには、今飲んでいる薬をジェネリックに切り替えた場合、本人負担が月々いくら減るかが大きく書かれている。高齢化が進む呉市は、一人当たりの医療費が年間60万円と、全国平均の1.5倍に上る。財政破綻を防ぐため、2年前、全国に先駆けて通知を始めた。呉市の小村和年市長は「市民にもコスト意識を持ってもらいたい。自分が病院に行ったときに、いくらかかっているのかは、案外みんな無関心」という。年金暮らしの鈴木孝雄さん(72)の家にも通知書は届いた。鈴木さんは、4種類の薬をジェネリックに切り替え、薬代が月々2000円程度減ったという。自己負担は1割。残り9割は、保険料や税金などで賄われるため、鈴木さん一人で、医療費の削減効果は月々2万円にもなる計算だ。呉市はこれまでに1万8000人ほどに通知書を送り、結果、ジェネリックに切り替えた患者は6割以上。抑制できた医療費は、年間8800万円に上った。
日本の医療費は、約35兆円のうち、8兆円が薬代だ。欧米では、ジェネリック医薬品の普及率が軒並み6割を超えているが、日本は2割。欧米並みに普及すれば、医療費は1兆円近く抑制できるとの試算もある。小泉政権時代から、ジェネリック普及は医療費抑制の手段として政府が取り組んできたが、思うように広がっていない。医師会などが壁となってきたからだ。ジェネリック医薬品について、国は『安全性も品質も変わりません』と説明している。