

2010年9月2日
慢性骨髄性白血病の治療を根本から変えたといわれている抗がん剤『グリベック』(成分名イマチニブ)。2001年に承認されて以来、飲んでいるだけで普通の生活を送れるという夢の新薬として注目された。しかし、値段は1錠3129円(承認当時)と高額で、毎日4錠服用しなければならない。また、根治はしないため、一生飲み続けなければならない。患者の自己負担軽減のため国が設けた『高額療養費制度』を利用しても、医療費の家計への負担は非常に重い。生活のために一度は服用を中断した患者とその家族を取材した。
旋盤工として働く新家尚員さんと幸子さんは、20年前に結婚。2人の子どもにも恵まれた。その幸子さんが慢性白血病とわかったのは8年前、地域の保健センターでの住民健診がきっかけだった。通常は3000から9000という白血球の値が、幸子さんは6万あまり。幸子さんは「治療を受けない場合の余命は1年ほど」と医師に告げられた。医師は前年に承認されたばかりのグリベックの使用を提案した。帝京大学医学部の小松恒彦教授によると、グリベック以前の標準的な治療だったインターフェロンでは、5年後の患者の生存率は10%。完治を目指しての骨髄移植でも50〜60%の生存率しかなかった。しかし、グリベックでは、5年生存率は90%に達している。小松教授は「グリベックの出現により、慢性白血病はがんという特殊な病気ではなく、高血圧や糖尿病と同じ日常的な病気になった」と話す。問題は医療費だ。尚員さんは「1錠約3000円。毎日4錠で、毎日1万2000円。月にしたら(医療費全部で)48万円ぐらいかかるというのにびっくりした」という。※保険適用で自己負担は3割。
グリベックは一生飲み続けなければならない薬のため、医師は、国の高額療養費制度の利用を勧めた。高額療養費制度とは、1カ月の医療費の自己負担の上限を超えて支払った医療費を後に払い戻す制度だ。一般的な所得の場合は、1カ月約8万円が負担の上限となり、さらに高額療養費の給付が過去1年間に3回あると、4回目以降、1カ月の上限は約4万4000円に減額される。この制度を聞いた時、「払えない金額ではない」と尚員さんは思ったという。吐き気や痙攣という副作用があったものの、薬の効果はすぐにあらわれた。