

2011年11月7日
民間のサラリーマンの厚生年金と公務員などの共済年金を統合する“年金制度の一元化”。6月の社会保障と税の一体改革で統合することを打ち出したものの、政府は、来年の通常国会に法案が出せない可能性を示し始めた。年金の一元化は、官と民の格差を解消し、年金制度を安定させるためのものだ。なぜ、年金の一元化が進まないのか。その背景にあるのが、共済年金の優遇ぶりだ。1年間で受け取る年金額が違い、共済年金のほうが受け取る額が多い。共済年金は、基礎年金と報酬比例年金部分に加え、“職域加算”と呼ばれる特別な年金をもらえるようにしてある。もらう年金は多いのに、掛け金は厚生年金よりも低い。なぜ、このようなことが可能なのか。学習院大学の鈴木亘教授は「単純な話。公務員のほうが民間よりも給料が高い。給料が高いので、保険料率が低くても共済年金は十分な収入がある。また、共済年金は昔からやっている制度だから、積立金を潤沢に持っている」と指摘する。実際、加入者のおおよその平均収入は、厚生年金が430万円、共済年金が672万円に上る。恵まれたグループで運営したいという意識が一元化を阻んでいる。また、遺族年金でも共済年金ゆえの優遇がある。厚生年金では、夫が死亡した場合、その妻が遺族年金を受け取り、妻が再婚したり死亡すれば、子どもに権利が移る。子どもが成長すれば、受け取る権利はそこで消滅する。ところが、共済年金にはその先があり、遺族年金の権利を父母が引き継ぐことができる。場合によっては、孫や祖父母でももらえる仕組みになっている。さらに、共済年金にだけは昔の恩給制度の名残で、毎年1兆数千億円の税金がつぎ込まれている。年金記録問題、いわゆる“消えた年金問題”でも差が出た。国家公務員の共済年金を所管するのは、社会保険庁ではなく財務省だ。民主党の長妻昭元厚生労働大臣は「国民年金の紙台帳は廃棄命令が出されたが、公務員の共済年金の紙台帳は全部取ってある。官民の格差がここまであるのかとびっくりした」と話す。
年金の一元化が閣議決定されたのは1984年。四半世紀以上も昔に決めたのに、実行されていない。しかし、年金の一元化が進むかに見えた時期もあった。小泉改革で一元化の具体化が決まり、2007年、安倍政権で国会に提出される。しかし、官僚側は『積立金を保険料の補填などに充てられる』という条文を盛り込ませた。