

2012年3月8日
福島第一原発事故から1年。福島県では、現在も16万人の被災者が県内外に避難したままだ。今後の生活をどのように再建していくのか、東京電力との賠償金の交渉が今も続けられている。ところが、交渉の過程で“賠償金に課税”するという問題が浮上していた。先月から始まった確定申告で、賠償金に課税されることがわかった人が多く、今、被災地では、怒りと困惑の声が上がっている。現行の法律では、賠償金に対して非課税となるのは、避難生活などにおける精神的な損害や、避難や帰宅にかかった費用のみだ。避難指示などで仕事を続けることができなくなったり、風評被害で収入が減った分などに対する賠償金は、事業所得の収入金額に算入され、課税の対象となる。さらに、避難指示によって給与が減った分に対する賠償金も一時所得とみなされ、課税される。
福島第一原発から11kmのところで農業を営んでいた三浦宏志さん(52)は、今も仮設住宅で避難生活を続けている。三浦さんは、父親から受け継いだ2haの農地を6haまでに広げ、コメや野菜を栽培、養鶏なども行ってきた。コンバインなどの農機具を新たに増やし、さらに拡大する予定だった。長男(25)も、跡を継ぐことを決めていた。その矢先、原発事故に見舞われ、家も農地も農機具もすべて失った。警戒区域のため、戻ることもできない。三浦さんは、「生活して、農業を始める初期投資は、ものすごくかかる。賠償金をもらって、違うところで生活を組み立てたい。それなのに、賠償金に課税されるというのは“棄民”みたいな感じ」と憤る。賠償金は、原発事故がなければあったはずの収入分が支払われる。三浦さんには1200万円が支払われることが8日に決まった。しかし、自宅やトラクターなどのローン約2600万円も返していかなければならない。来年以降、賠償金がどうなるかも決まっておらず、生活を立て直すにはほど遠い現状だ。それでも、賠償金は一時所得扱いとされ、必要経費などを差し引いた額に課税される。三浦さんは、120万円を納税しなければならない。これは、三浦さんだけの問題ではない。コメ農家の男性(55)は、「被害を被っておいて、国が税金を取るのは納得いかない」と話す。
2年前、宮崎県で発生した口蹄疫の問題。国は、家畜が殺処分された農家に対し、賠償金を支払った。