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タイ・マレーシア・シンガポール編 撮影日記

ジョホールバル中央駅から夜行列車に乗る
「東海岸線を走る夜行列車・ジャングルトレイン」
旅もいよいよ終盤。マレーシアの最南端、ジョホールバル中央駅から夜行列車に乗ってマレー鉄道の東海岸線を北上する。タイ国境に近いトゥンパッ駅までは723キロ。夜7時に出発する列車がトゥンパッに到着するのは翌日の午後1時、およそ18時間の旅だ。街を抜けると、すぐに森林地帯に入っていく。首都クアラルンプールやペナン島の玄関口バタワースなどを結ぶ、電化された西海岸線に比べ、東海岸線はまだ発展途上。自然豊かなマレーシア東海岸の熱帯雨林を走るため、この路線は別名ジャングルトレインとも呼ばれている。
夜行列車は、普通車両と寝台車両に分かれている。今夜の寝台車両は満席と聞いていたが、我々が乗車してしばらくは空席が目立っていた。4時間半で東海岸線と西海岸線の分岐駅、ゲマスに到着。この駅で40名ほどの学生たちが乗車してきて、寝台車両は一気に満席状態へ。彼らはマレーシア北東部の街コタバルに帰宅途中の修学旅行生。西海岸線の新型列車やクアラルンプールのモノレールに乗車する鉄道体験の旅だったそうだ。「新型列車が速くて綺麗だった」と話してくれた彼ら。夜遅い時間にも関わらず、この寝台車両だけは深夜まで賑わいを見せていた。
夜行列車の楽しみのひとつは食堂車。シェフが深夜でも常駐しており、腕を振るってくれる。中でも作りたてのナシゴレンの味は格別で、ロケを重ねてきた我々の体を癒してくれた。食堂車は早朝から賑わう。そこでひとりの若い女性と出会った。彼女はジョホールバルに通う大学生で、年に数回ほど、北東部の小さな町へと里帰りをするのだそう。他の交通手段でも帰れるが、車窓に広がる自然を眺めたり、車内で人と出会えることが楽しみで、必ずこの夜行列車を利用している。この時も食堂車にいた我々に気さくに話しかけてきてくれた。
18時間乗り続けた夜行列車は、実に多くの出会いに満ちていた。
ディレクター 許斐康公
にぎやかな修学旅行生
里帰り途中の女学生