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黄金の大地をゆく 秋の韓国周遊1300キロの旅 撮影日記

人気の観光地、麗水の港
韓国南端の港町・麗水に到着
観光列車S-trainの車内。全羅南道(チョンラナムド)地方に入る少し前から黄金の大地が広がった。溢れんばかりの生命力を放つ一面の稲穂は力強くしなり、列車が作り出す風を押し返そうとしていた。
S-trainは「南道海洋列車(ナムドへヤンヨルチャ)」の略称で、ソウルや釜山と全羅南道地方をつなぐことに由来する。この列車の特徴は、車両ごとにちがう内装。中でも変わっているのが3号車のお座敷車両だ。ここはチケットを購入した人が誰でも利用できるフリースペースになっていて、乗客が行ったり来たりしていた。5歳くらいだろうか、くりくりの髪にピンクのシャツを着たおしゃれボーイがはしゃいでいた。これから谷城(コクソン)という駅で降りて汽車村(キチャマウル)に行くと言う。大の子ども好きである平林カメラマンが夢中でこの子を追いかけていて微笑ましかった。
ソウルから走ること5時間近く、終点・麗水(ヨス)に到着。ここは2012年に開催された万博をきっかけに注目を集めている観光スポット。加えて韓国人が国内旅行する場所としても人気だとコーディネーターのキム・ゴノさんが教えてくれた。たしかに、ふんわり磯の香りに包まれた港町とパステルカラーの水色をした海はどこかロマンチックで、ドラマに出てきそうだった。
思いのほか、撮影が早く終わった。というのも海、李舜臣(イ・スンシン)将軍の銅像、水産市場はすぐ近くにあり、巡りやすい場所だからだ。夕暮れの中、海岸でベンチに座り、待ち時間に海を眺めていると、フェリーに駆け込む人たちがいることに気づいた。釜山方面の小さな島へ行く船だった。麗水は旅客船のターミナルでもあるらしい。離島に住む人たちはきっとここで買い物を済ませて帰るのだろう、と想像がふくらんだ。この日の撮影のシメは、麗水名物のカンジャンケジャン。生のカニを醤油に漬け込んで熟成させた食べ物だ。カニそのものの味が濃厚で、やや甘めの醤油の味付けに合う。身を食べ終わったら、甲羅にご飯を入れて蟹味噌と一緒にいただくのが流儀。これが絶品でやみつきになった。
ディレクター 長谷川眞子
S-trainのお座敷車両
名物のカンジャンケジャン