世界の車窓から

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オーストラリア編 撮影日記

海沿いを走るコックルトレイン
変わらない風景に思う
オーストラリアの車窓もいよいよ終盤。最後の長距離列車、メルボルンとアデレード828kmを結ぶ「ジ・オーバーランド」に乗車する。1887年に開業したオーストラリアでは歴史のある鉄道である。ここまで3000km近くも走ってきたが、車窓に展開する風景はほとんど変わらない。どこまでも牧場や牧草地が続いている。蜃気楼が昇る地平線を見晴るかし、広大さに驚きはするが、一方でこれでもかという容赦のない連続性に呆れ、その単調さを呪いたい気持ちも湧いてくる。そして、単調さでは一歩も引けをとらない砂漠との違いに思いを馳せる。これはあくまで私個人の印象だが、砂漠は飽きない。でもこちらはしばらくすると飽いてくる。この違いは一体何なのか、そんなことを考えていたら、沿線中唯一のアクセントとも言えるマレー川を渡った。
2500kmも流れるオーストラリア最長の川だが、どうも印象が薄い。外国の大河というと対岸が見えないくらいのを想像するが、マレーブリッジあたりでもせいぜい信濃川といった感じなのだ。水も泥水のように濁っている。
今回の取材では、マレー川水系と4回の接点を持った。最初は上流にあたるシドニー〜メルボルン間のオーブリーで。2回目が中流域のエチューカ。そして今回渡った下流域のマレーブリッジが3回目。そのいずれも川は濁っていた。最後の接点は、アデレード到着後乗車したコックルトレインのグールワ。ここは、マレー川の河口域にあたり、付近には長さ140kmという世界でも2番目に長い砂州がある。つまり、マレー川は上流からどんどん砂を運んできて、それが堆積して砂州を形作った。その砂は、上流域に広がる牧場から流されてくる。河口は堆積した砂で大河とは思えぬほど狭められ、今や浚渫が必要なのだという。
ずっと車窓に展開してきた牧場は、オーストラリア大陸にヨーロッパ人が入植した18世紀以降に出現した人為的な風景だ。流れゆく車窓ではよく見えないが、牧場には家畜が逃げないよう延々とフェンスが張ってある。オーストラリア大陸は、よく手つかずの大自然と形容されるが、自然は年々狭められているのかもしれない。今回旅した限りでは、コアラは公園の木を登り、カンガルーは牧場で跳ねていた。最後にコックルトレインの車窓に広がった南極海に続く大海原を見て、少しホッとしたのだった。
ディレクター 浦野 俊実
川が人々の憩いの場となっていたエチューカ付近
マレー川河口付近に集うペリカン