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タイ・マレーシア・シンガポール編 撮影日記

マレーシアからシンガポールへ
「旅の終点シンガポール」
マレー半島縦断の旅。最後は、マレーシアの最南端ジョホールバルからジョホール海峡を渡って、シンガポールへと入国する。
かつてはクアラルンプールからシンガポールまでの直通列車もあったが、現在はジョホールバル中央駅とシンガポールのウッドランズ駅の間をシャトル列車が往復している。運行本数は1日に10本程度、運賃は5リンギット、日本円でおよそ130円だ。列車はジョホール海峡を眺めながらコーズウェイと呼ばれる堤防を渡ってシンガポールのウッドランズ駅に入線する。その乗車時間はわずか5分。線路の横には巨大なパイプが3本走っているのだが、これらは水道管として使われているもの。自国で水を賄いきれないシンガポールは、マレーシアから水を購入しており、大量の水がこのパイプを通してシンガポールに送られているのだ。
列車がウッドランズ駅に到着すると、乗客はそこでイミグレーションに並ぶ必要がある。その為みな下車するや否や走り出し、少しでも早く入国しようとする。ほとんどは観光や買い物目的にシンガポールに向かう人たち。その走っていく様はまるでテーマパークにいち早く入園しようと心躍らせている人たちのようだった。
シンガポールは言わずと知れた東南アジア屈指の経済大国。19世紀以降、東西貿易の中継地となって発展を遂げ、現在では世界有数の金融都市、そして観光立国として栄えている。かつてはマレーシアなど他の東南アジア諸国と同様、熱帯雨林が広がっていたシンガポール。その森林はほとんど姿を消してしまったものの、近年では街の至る所に緑が整備され、「ガーデン・シティ」と呼ばれる美しい都市になっている。
タイの首都バンコクからはじまり、様々な列車を乗り継いで夏のマレー半島2700キロを縦断してきた今回の旅。思えばタイの水田地帯、マレーシアの熱帯雨林やゴム、パームなどのプランテーション農園。そして見事に緑が整備された都市シンガポール。人種や宗教、文化、経済の違いこそあれ、マレー半島の列車の車窓には常に緑が溢れていた。
ディレクター 許斐康公
ウッドランズ行きのシャトル列車
緑豊かなシンガポール