世界の車窓から

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黄金の大地をゆく 秋の韓国周遊1300キロの旅 撮影日記

カフェ「ボヘミアン」の入り口
江陵で飲んだコーヒーの味
コーヒーと海の街、江陵(カンヌン)。かつて海岸沿いにはカフェではなく、インスタントコーヒーの販売機が並んでいたという。海を見に来るカップルが温かいコーヒーを飲みながらロマンチックな時間を過ごしていたらしい。20年ほど前、韓国バリスタの元祖パク・イチュさんがソウルから江陵に店を移したことによって、触発された人たちが次々とカフェを出店。今のかたちの江陵コーヒー通りが出来上がったと聞く。
ボヘミアンコーヒーの店主パク・イチュさんは日本で生まれ、東京・新橋の学校でコーヒーについて学んだそうで、流暢な日本語を話す。撮影ではスタッフ全員にコーヒーをご馳走していただき、ほっと一息つくことができた。今回の撮影チームのドライバー、キムさんは超ベテラン。韓国中を知り尽くす頼もしい存在だ。そしてチームで一番のグルメでもある。そんなキムさんが「ずっと来てみたかったの!」とテンションが上がっていた場所だった。聞けば韓流スターたちもわざわざお忍びでコーヒーを味わいに来るのだそうだ。私が飲んだ「ゲイシャ」というコーヒーは酸味が強く、さわやかな風味がスッーと鼻に抜けた。個性的な味わいは衝撃的で稲妻が走った。きっとあの味はボヘミアンコーヒーでしか出せないのだろう。
江陵からヌリロ号というローカル線に乗っておよそ20分、ギネスブック認定の世界で最も海に近い駅、正東津(チョンドンジン)に向かう。週末の朝は人も少なく、お客さんは6人くらいしか乗っていなかった。出発からしばらくして海岸線を走りはじめると、幻想的な海が目に入る。ヌリロ号の車窓はまるでひとつの絵画。静かな空間で眺める一面の青にうっとりしてしまう。たまに差す強い日差しがキラキラと光って、反射するとまぶしい。「そんなに見つめないで」と海から言われているようだった。
ディレクター 長谷川眞子
酸味が強くさわやかな「ゲイシャ」
日差しが反射する海