世界の車窓から

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秋のイタリア 歴史都市と南チロルの旅 撮影日記

プステリアの渓谷を走る蒸気機関車
世界の車窓からロケ再始動
2021年9月「世界の車窓から」イタリア編のロケがスタートした。2020年3月に予定していたロケが延期となって以来、1年半ぶりにようやく撮影が再開することになったのだ。新型コロナの感染状況が落ち着いている国で、リモートでのロケに踏み切ることになった。
これまでのロケとは違い、実際に撮影するのはイタリア在住のスタッフ。オンラインで打合せを重ねて、本番を迎えた。車窓ロケの経験豊富な大ベテランのコーディネーター、マルゲリータさんと日本人の助手1名、イタリア人のカメラマン2名とドライバー1名、日本からはディレクター2人とプロデューサーがビデオ通話でつながり取材に参加。さらにイタリアのオフィスから同じく大ベテランの大貫さんに後方支援いただき、総勢9名のロケ体制となった。長期間の時差のあるリモート撮影ということで、路線ごとに担当ディレクターを決めて、協力しながらリモートロケを進めた。
今回のルートはローマから北上しフィレンツェやヴェネツィアを経て南チロルに向かう。途中、特別列車も2本あって、古都あり、遺跡あり、芸術あり、お祭りあり、大自然ありのイタリアの魅力を詰め込んだルートだ。出発前、マルゲリータさんは、カメラを向けられた乗客がどんな反応を返すかについて、かなり不安を感じていたようだった。そして、私たちの念頭にも少なからず、ニュース映像のコロナ禍にあえぐイタリアの姿があったから、やはり人々の反応に心配はあった。私の頭にはたとえ人の撮影がうまく行かなくても、沿線の見どころが多いから何とかなるだろう、なんて打算があった。が、結果的に、ローマにあるトレヴィの泉は満員状態だったし、乗客はマスクをしていても微笑みが分かった。撮影で出会った人々は、待ちわびた旅に胸躍らせ、その喜びを語ってくれた。巡礼路をゆく人々や、ゆったりと旅を楽しむ夫婦、電車遠足に大興奮の子供たち。いつもの世界の車窓からだった。
細かい情報も限られている中、撮影指示というよりも応援の色合いが強かったかもしれないが、現場のチームワークは素晴らしく、アレコレと出される要望を柔軟にアレンジする手腕は流石だった。シリーズの最終回を飾るチロルでは敷設150年を記念して特別に走るSLを撮影した。車窓には大自然の中に沿道で列車を迎える大勢の人々がいた。それは、レンズごしに励まされているようであり、また、何か希望に向かう自分たちの姿のような気がして胸が熱くなった。
ディレクター 土屋 麻子
イタリア撮影チーム
観光客で混雑するトレヴィの泉