実は、この記者会見と同様の言葉を、テレビ朝日の現地スタジオでも、長島選手は口にしていました。
「獲ってしまったら、別にメダルは・・・・それよりも、やったこと自体が大事で・・・・
メダルを他の人が見てくれるのを見ながら、漠然とそんな風に思いました」と話してくれていました。
インタビューをしながら、私は長島さんはなかなか哲学者だと思ったのです。
「メダルと言う物質の獲得そのものに意味があるわけではなく、メダルを目指し、そしてそれを獲ったという事実に意味がある」
「そして、メダルを獲得してしまったら、彼の心は次の目標に向かっている」
自分が置かれたメダリストとしての立場をかなり客観的にみての発言だなと感じたのです。
しかし、記者会見での言葉足らずの面もあって、その部分だけが切り取られてニュースに流れてしまえば、面白おかしい部分だけが際立ち、本人の思いとは別物になって、一人歩きをしてしまいます。そこでお叱りを受けることになったのでしょう。
アスリートは身体で自己表現をする人々だけに、言葉で自分の気持ちを表現するときに、十分に思いを伝えられず、時として誤解されてしまうことがあります。
特に、オリンピック選手のように4年に一度だけ大きく扱われるとなると、その人の人柄などもよくわからぬまま、言葉が一人歩きして誤解される危険性はますます大きくなってきます。
「こうなると、当たり前のことしか、言えなくなってしまいますね」
ボソッとつぶやいた長島さんの気持ちが痛いほどわかります。
今回、バンクーバー五輪を一緒に見ていただいている長野五輪の金メダリスト清水宏保さんの言葉が胸に突き刺さりました。
「ねえ、僕がマスコミ嫌いになった理由もわかるでしょう。ナカタも、イチロウもそうじゃないですか。」
マスコミ嫌いの選手を作り出さないための努力は、私たちにも必要なのですね。
本当の真意がどこにあるのか、番組を作る側も、視聴者も、関係者も深く読み取っていく必要があるのでしょう。
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